AS(アスペルガー)関連

コーチング②ASの感覚過敏等

自己コーチングガイド各論② ASの自己理解そのH (その他の諸特徴)

H.ASのその他の諸特徴について理解する。

 <感覚過敏・強迫症状・身体症状>

 多数派の感覚は、「意味や状況で逆に感度が調節できる」というような特性を持っており、「自分に関係ない」と思えば聞こえなかったり(実際には耳には入っているが情報として脳の中で小さくなったりして)、運動会のピストルのように初めから分かっていれば驚かないレベルに調節したりして、外界からの情報を取捨選択調整するメカニズムが働いていると私は考えている。  

 これに対しASの感覚の特徴は、全体的に感覚は過敏であるのに加えて、「興味関心のある情報が増幅される」、「人に関する(特に感情的な)情報が増幅される」ことと、「取捨選択できないでナマの大きさそのままが入ってくる」と表現できるような特徴がある。

 例えば目の前の人と話していて、話題が興味のないことであったとして、遠くで関係ない人が話していることに興味があったりすると遠くの話し声だけが聞こえたりする。分かっていても運動会のピストルの音が怖かったり、車の音などの人工音が極端に気になったりする。  

 聴覚の他にも、身体全体の触覚 、味覚、嗅覚などは過敏で、ちょっとした接触でも非常にびっくりしたり、食感で極端な偏食となったりする。

 この感覚過敏の延長上に、「強迫症状」がある。入浴や手洗いに非常に時間がかかったりする。

 また、これらの感覚過敏や強迫症状の程度は、ストレスによって変動する。ストレスがかかると、聴覚過敏や体全体のかゆみ、強迫症状などの他、頭痛や動悸、吐き気、ふらつき等のパニック障害様の症状、下痢や腹痛などの過敏性腸症候群様の症状も出現するため、心療内科にはパニック障害や過敏性腸症候群、社会不安障害として受診することも多い。

  

<しゃべり方、声、文章表現など>

 ASの人は積極奇異型や孤立型などの場合、多数派から見ると「状況に関わりなく、丁寧であるが敬語の使い分けがない」独特のしゃべり方(教授と呼ばれたり)になることも多い。話は自分の興味があることの場合には長く、詳細に、聞いているほうの反応に関わりなく続ける。身振りは少ないことが多い。

 文章表現は「非常に簡潔で一行しか書かない」場合と、「非常に詳細で長文になる」場合がある。

 

<服装や車、持ち物へのこだわり>

 ASの人は全く同じデザインの色違いを続けて着たり、白黒だけであったり、服装のこだわりがある人が多い。持ち物にも、メーカーやブランドにこだわったり、多数派には説明しても理解しにくいこだわりが多く見られる。 

 

 あなたの生活で上記の説明に当てはまることがありますか? 具体的に書き出してみましょう。

 

 ASの人にとって感覚過敏と強迫症状は非常に切実な問題で、一般世間での生き辛さの大きな部分を占めている。特に聴覚過敏と強迫症状はストレスと相関することが多く、これらの症状の悪化は、本人も周囲の人も、「現実生活のストレスが大きい状態である」と認識する必要がある。

 外見上の特徴は、「風変わり」「個性的」「超然とした」「孤高」等と評されるが、基本的に丁寧であり、一貫性があるために、「ひとつのスタイル」「個性」として認識されうる。 

 ただ「自分がこう見られている」ということを理解しておくことは必要だ。またこれらの表面上の諸特徴には、認知と行動の本質的な特徴が現れていることが多いので、時々客観的に見直す作業は自分自身に関する気付きにつながる。信頼できるサポート者に時々印象を聞いてみるのは役に立つことである。

 


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コメント

    • まーちん
    • 2006年 11月 27日

    音痴な人のカラオケや、
    建築現場や道路工事の、大きな音が長く続くなど
    暴れたいほど気が狂いそうに、生理的に不愉快
    になることがありますが、
    周りの人は、特に気にしてない様子。
    みんな忍耐強いなー、えらいな~!
    と思っていましたが、
    違うんですね(^_^;
    選択して音を聞いてるのですね。
    自分で生きにくいと思ってきたことが
    少しずつ理解できてきた気がします。
    最近ストレスがへったと思うんです。
    このブログ、感謝しています。

    • リセット
    • 2006年 11月 27日

    こんにちは、質問です。
    ADHDにも聴覚・嗅覚・触覚の過敏は有り得るのでしょうか?
    《触覚》→犬や猫などの動物全般、触った感触が気持ち悪くて触れない。大きめの熱帯魚を網ですくった時に手に伝わって来るグニュグニュ感が気持ち悪い。
    《嗅覚》→動物園の臭いが耐えられなくて吐いてしまう。(動物や動物園が苦手だからでは無く、動物園は大好きだけど臭いがダメ)
    あらゆる場所で、漂って来る臭いが気になる。
    ハイターやイソジン等の薬品系の臭いは好き。
    《聴覚》→YANBARU先生が記した以外にも、時計のカチッカチッという時を刻む音が気になりだしたら眠れない。入眠中も些細な物音で目が覚める。等…
    以上が、頭に思い浮かんだ事例です。(もしかするとこの程度の事は過敏とは言わないのかも知れませんが。)また、ストレスを受けている(不適応)時に起こる身体症状はASの方に限らず、発達障害者全般に当てはまる事なのですよね?

    • yurin
    • 2006年 11月 27日

    私は『臭い』に敏感すぎと言われたことがあります。自分ではそうは思いません。ただ匂うから『匂うよね~』と言ってるだけなんですが。でも他の人より明かに敏感なようです。子どもの頃からいつも匂いに敏感に反応してたようで、『犬みたいな鼻だね』と言われてました。
    小さな物音で目が覚めることはあります。人の話し声やテレビの音が妙にうるさく感じてイライラすることも。特にリモコンがフローリングの床に落ちる音が苦手で『落とさないで!』と子どもをしかってしまうことも。(何ゆえか、この音にイライラするんです)
    でもいつも気になるわけではなく、精神的に疲れているときに過敏になるようです。
    あと、役員の集まりで一つの部屋で何グループかに分かれて話し合いをするとき、隣のグループの話す内容に聞き入ってしまって、自分のグループの人の話が聞こえない(聞けない)。
    (これは聴覚過敏というより集中力の問題かもしれません。)

    • ALIVE
    • 2006年 11月 27日

    こんにちは。
    AS当事者の過剰なまでの感覚過敏は、多数派には理解不能な面が多々あります。
    このコーチングガイドは、発達障害のコーチングガイドであると同時に
    発達障害を知らない人のためのガイドにもなりうる事に気がつきました。
    AS当事者の自身を観察してみると、あらゆる感覚が「でこぼこ」な感じです。
    それに加えて取捨選択調整機能が弱いので、やっかいです。
    >「興味関心のある情報が増幅される」
    私の場合、自分自身で興味をもった対象には、ものすごく集中して取り組みます。
    その場合、一時的にしろ、外部からの刺激が遮断されて、脳内おしゃべりが
    停止し、頭の中が空になった感じがして、心地よいです。
    (ただしこれは今のところ、自身の聴覚過敏であっというまに崩れ去ります。)
    過集中状態は、心地よいだけに、自力で終わらせるのが難しいなと感じています。
    自分では、取り組むものが「自分で納得して選んだもの」という点が重要視されています。
    逆読みすると、やはり納得しないと行動しないという原則に基づいているのに気づきます。
    >「人に関する(特に感情的な)情報が増幅される」
    他者に対する警戒度は高いです。ある程度その人の背景をしらないと、その人が
    どのような行動・要求をするか予想できないからです。
    先日も、つい警戒心を解き、他者に接近して痛い目にあいました。
    ですから、他者に対するアンテナはつねに張り巡らしています。
    (同時に、この人は安心できると、ひとめで知ることもあります。)
    このあたりの警戒度の強さは、自他の境界があいまいで、他者との距離感がうまく
    取れないからなのかもしれません。
    多数派世界を観察すると、そこには、「その場しのぎ」とか「うそ」とか「社交辞令」とか
    「ゴールデンルール」とかがあるので、やはり言葉どおり受け取る事はできない場面が
    多く、緊張というか警戒はします。
    2次的障害が悪化することは避けたいですから。

    • ALIVE
    • 2006年 11月 28日

    >「取捨選択できないでナマの大きさそのままが入ってくる」と表現できるような特徴がある。
    とにかく私は、テレビの汚い音や不必要に大きい音、連続する犬の吠え声、チューニング
    されていない楽器の音、その他もろもろのやかましく汚い音にはお手上げ状態です。
    幸い、雨とか風の音、セミや虫の鳴き声など、自然の音は心地よいので、台風や大雨の時は
    耳栓はずして、耳を休める事ができます。
    視覚的にも全部みてしまう(見えてしまう)ので、広告看板等の多い場所は苦痛です。
    人ごみも苦手です。(人が多いと騒がしいので苦手であるうえに、さらに見なくてもいい
    他者の顔を見て、勝手に記憶してしまう。)
    以前は、自身でなぜ音などを取捨選択できないのか、不思議でしょうがなかったのですが
    今はその理由を知ることによって、少しは事前対応できるようになりました。
    (24時間、耳栓もしくは防音イヤーマフ使用+騒音源からは、「逃げるが価値」
    それでも対応しきれない場面があって、さらに+クスリでひっくりかえる。)
    やはり理由・原因を知っておくことは必要だなと思います。
    その意味でやはり、このようなブログで情報を発信し、発達障害自体に対する理解への
    すそ野を広げようとするYANBARUドクター様の姿勢には、頭がさがります。
    多くのドクターは自身の持つノウハウを無償(無料)では公表しませんから。
    私はこのようなノウハウは、ある意味において、公共的なものだと思うのですが・・・

    • 匿名
    • 2006年 12月 10日

    コメントありがとうございます。
    まーちん様
     ASの人の生き辛さは、本人から実際に言葉で聞かないと、他の人には理解が難しいのですが、分かると「こんなにも苦しい」と驚くばかりです。理解が一番大事ですね。
    リセット様
     私はADHDですが、味覚の過敏と絶対音感はあると思います。カミさんから「ばっかり食べ」を指摘されますが、「口の中で異なる触感が交じり合うのが嫌」という感じで、ラーメンの上に乗っている具を先に食べたりします。ASに似ていますね。ADHDにもあると思います。
    yurin様
     あなたの書いておられポイントは注意集中のほうの問題であると思います。しかし現実生活の中では聴覚過敏と共通しますね。
    ALIVE様
     「他の人はどうであるか」を理解することで、「自分の辛さを理解できないのは何故か」が分かり、「辛さが理解されうる」ということで多少和らぐことが可能であると言うことだと思います。
     感覚的な辛さを取り除くことは困難ではありますが、少なくとも周囲が理解し協力することは可能なので、お互いの理解の試みを続けましょう。
    コメントありがとうございました。

    • F
    • 2013年 8月 17日

    私には感覚過敏はない(むしろ鈍い)と思っていました。
    嗅覚は鈍いみたいです。
    確かに運動会の徒競走のピストルは怖くてたまらなかったです。
    (「走る構えをして」「鳴る前に飛び出すくらいでいい」と母親に発破をかけられたが、それどころじゃなかった)
    電話をしている横で雑談されると、電話の相手の話が聞き取れません。自分の片耳をふさぐか、「ちょっと静かにして!」とジェスチャーで伝えます。(みんな「あ、ごめん」って静かにしてくれますが、感じ悪いのかしら)
    他には、ハードコンタクトが大嫌いです。(怖いし痛くてはめられない)はめたあとも瞬きするたびに視界がゆがむし、ずるずると眼球を滑って降りてくる感覚も嫌でたまりません。
    今はソフトコンタクトにしています。
    首に詰まった服やアクセサリが苦手で、すぐ頭痛になります。
    長袖の服を着たときに、インナーが腕の途中で止まっているのも嫌。
    マニキュアやネイルも嫌い(爪に異物がくっついている感覚がある。爪が暑い)なので、表面だけ磨いています。
    今困っていることは、夫のいびきがひどいこと。
    私は夜中に目が覚めると寝付けません。
    鼻腔拡張テープもつけてもらえないし、耳栓も役に立ちませんでした。(耳も痛かった)
    夫は私が別室で寝ているのを見つけると不機嫌になります。(「うるさくて悪かったな」という感じで、夜中なのにどこかへ出かけてしまう)
    呼吸も止まるときがあるので、何度受診を勧めたが、本人は自覚がないし痛くもないのでどこ吹く風。
    動画を撮って見せると、「ほんまにうるさいなあ」と本人も納得し、やっと睡眠外来に行ってもらえました。

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