ACの認知のゆがみは通常小学校中学年から高学年のときに形成され、思春期や青年期に破綻することが多い。ほとんどはこの破綻をきっかけに治療につながる。例えば抑うつ、痛み、動悸、ふらつき、下痢や便秘などの身体症状、自傷やボーダーライン様の周囲を振り回す行動化(攻撃的言動、アルコールや薬物依存、恋愛やセックスへの依存など)が主な破綻のかたちである。
ACの子供は見捨てられないように周囲の期待に応え続けるので、通常学校でも家庭でも優等生となる。勉強も家事の手伝い(実際上主婦をこなす子供もいる)もほぼ完璧にこなし、思春期前までは「いい子」であることに深刻な破綻は来たさない。
それが思春期にさし掛かり、「自分の考え」やそれと食い違う「大人の都合」などが少しずつ自覚されてくると、全面的に期待に応えるように振舞うことが、①まず自分の中でどこかおかしいと気付くようになり、そう感じながらも自分本位に行動することは出来ず、はっきりと意識できないような形で「自分で自分を許せない」という状態となり、このケースは不安や抑うつ、自傷や身体症状などのかたちをとる。これを「思春期破綻型」と呼ぼう。
②次に多くみられるのは、結婚や恋愛などの近い人間関係の中で、離婚などの現実的な破綻を期に、「親のせいだ」と激しい親への攻撃を始めるケースで、「境界例」というかたちで相談されることが多い。「親のせい」と激しく攻撃するのが大きな特徴で、自傷したり暴れたり、ストーカーのようになったりもする。これを「挫折破綻型」と呼ぶことにする。
① 思春期破綻型の経過とその意味
思春期破綻型のACは、正常な発達の中で、自我の成長とともにACのスタイルが維持できなくなった事態と考えられる。「なぜ自分だけがここまで我慢しなければならないか?」「自分の意志はどうなるのか?」という素朴な疑問に対し、ACの「本当のことを見ない」認知のゆがみが、言わば「ごまかし切れなくなって破綻する」という形であり、行動は自傷などの問題行動であっても、周囲に合わせるのではなくて本人自身の思いから出てくる意味では、これらの問題行動のほうが本人にとっては重要で、これを頭から否定するべきではない。自立へ向かう正常な発達の一段階であるのだが、それまでがACであまりに「いい子」であったばかりに、中途半端に反抗的にはなれないことから、また見捨てられ不安が表面化して主に親の愛情を直接試しに行くことから、極端な行動化となることが多い。
② 挫折破綻型の経過とその意味
挫折破綻型では、特定の相手との結婚や恋愛などの関係が破綻して、うまく行かない事態で
見捨てられ不安が急激に激しくなり、当の相手や、親の自分への愛情を確かめなくて居れなくなる。「私はこんなに尽くしているのに」という形で相手の愛情を手段を選ばず要求し、自殺企図や暴力、ストーカー的な追及などして、「ここまでしても見捨てないか?」と迫る形の行動化となる。
行動化にどう対応するか?
これらの行動化は、上記のように「周囲に合わせるのを止めて自分の気持ちに従って行動する」と言う意味では自立へ向かう側面がある。だから、私が選択する対応は、「やった内容はまずいけれど、やりたいようにやったことは頑張ったね」とむしろ評価する。そこから、「あなたの本当に欲しいもの、本当に確かめたいことをはっきりさせて、言葉で確かめに行こう」と言う形でカウンセリングの中に取り入れる。言語化できれば、行動化は収まっていく。