人格障害と呼ぶ前に
(注 以下の説明は専門家でない方への分かりやすい解説を意図したもので、あくまで私の臨床経験に基づくものです。学問的な用語法や定義から外れる表現をお許し下さい。なお、人格障害にはさまざまなものがありますが、ここでは主に臨床の現場でよく見られる「境界性人格障害」について述べています。)
はじめに
(境界性、自己愛性などの)人格障害と呼ぶ(診断する)ことの治療上のメリットは少ない。実際多くの場合は「治りません」「当医療機関では扱いたくありません」という意味となり、相談した本人や家族は落胆するしかない結果となる。
私は一見「人格障害」に当てはまる多くのケースを見てきて、中には治せる(別のケアが可能となる)ケースがかなりあることが分かってきた。そこで、人格障害と呼んでしまう前に検討するべきポイントをまとめてみようと考えた。以下の手順は、手立てを見出せるものから順に除外していく形となっている。
目次
7.「自己正当化型ADHD」および「自己正当化型ADHDのAC」の可能性を考える
8.ACという考え方
9.ACの認知の修正
1.人格障害が疑われる状況や症状
①人格障害が疑われる状況、症状
リストカット、OD(大量服薬)、飛び降りや自分の首を絞めるなどの自殺企図、周囲の人への暴力・暴言、自殺の予告、アルコールや薬物の乱用、摂食障害などが見られ、これらの「行動化」の起こり方が、「見捨てられ不安」によって一見意図的に周囲の人を困らせて脅したり、人の愛情を試すような形で現れる。多くが周囲の人の対応が悪いと責任転嫁し、本人の問題であることの否認が見られ、自ら努力して回復しようとする姿勢が不足して見えることが多い。こういうパターンや症状の場合に、「病気ではなく性格の問題、人格障害」と言われることが多い。