3.躁うつ病でないことを確認する

私が研修医の頃、「反社会性人格障害」と言われた人が、炭酸リチウムを服用してびっくりするほど普通の人に変わったのを目撃したことがある。

私の指導医は「躁うつ病だった。もっと早くリチウムを使ってあげるべきだった」と述懐していた。

 

躁うつ病の躁状態は、頭が変によく働いて、相手の弱いところを突いたり気分の変動激しく攻撃的になったりするので、一時的には人格障害と区別が難しい場合がある。

 

 躁うつ病を疑いさえすれば、大きな気分の変動の波がある病歴などからも区別は容易だが、何よりも炭酸リチウムやバルプロン酸、カルバマゼピンなどの感情調整薬を「十分量、十分期間(効く服用量に達してから2ヶ月程度)」試してみれば分かる。

 

 人格障害云々の話は、上の薬剤調整が終わって、無効だと分かった後だと私は考えている。

 

 炭酸リチウムは、不思議だが認知を改善する(自分を客観的に見られるようになる)作用があり、実は本当の人格障害でもアスペルガー症候群でも効くのだが、感情調整薬が効けば、治療的診断で「躁うつ病だった」ということにしてもいいと私は思う。


PAGE TOP