ADHD私見 並行分散処理の不安定な脳

(以下は私の一当事者としての私見であり、学問的な見解ではないことをご理解願います)

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ADHDの本質は、脳の働きの質が異なることである。

私の最近の考えは、「数多くのプログラムが並行分散処理で複数同時に動き続けている」という状態であると考える。

一般的な思考が、「ひとつのプログラムを開始し、それが終わると終了として次のプログラムを」という形であるとすれば、

そういうプロセスが同時進行で並行して回り続けていると考える。

これ自体は、よく言われる男性と女性の脳の違いと比較すると、

一見すると女性型の、「話をしながらテレビを見たり作業をしたり」というタイプと共通するように見えるが、

女性型の場合には、それぞれの働きは独立し、言わば脳の別々の部分で一つ一つのプログラムを回しているということになり、かなり異なる。

 

むしろ

女性型の融通性とは逆に、男性型の強く集中するようなプロセスが、複数同じ場所で動いているというという形だ。

 その結果、「そのプログラム同士が時々混線する」ということが起こるのがADHDの脳の特徴だ。

ADHD独特の奇抜なひらめき、アイディアはその混線から生じる

当然のこととして、混線が生じるシステムは基本的に不安定で、同じ成果を平均して出し続けるのには向かない。

この「並行分散処理の不安定なシステム」という仮説で、ADHDのいろいろな特徴を説明してみよう。

 

1.「注意欠陥」

不安定性の直接の帰結として、「プログラム相互の乗り換えや、その結果の入出力が安定しない」ということで説明できる。

パソコンで言えば、複数のウインドウが勝手に開いたり閉じたり、入れ替わったりして、当然物忘れや他の事へ注意が転換して戻らなかったりといったことが起こる。

 

 

2.「状況がわからない」

システムが不安定で脳の各部分の連絡調整がうまく行かないために、周囲の状況や自分の感情などの思考以外の情報が十分に入って来ないと考える。CPUやワーキングメモリは常時いっぱいいっぱいで動き続けているので、負担が大きい入出力装置をつなぐとダウンしてしまうようなものと考える。情報処理をする頭頂葉だけが他の部分と独立して突出して働き続けているようなイメージだ。

 

3.「物が捨てられない」

ADHDの非常に重要な特徴のひとつであるのだが)、「物の用途が脳の中で終了にならない」ということで説明できる。

「まだ使える」と言うことが多いが、「今は使わなくても、その物は終わっていない」ということであるのだ。

「捨てる」というのは、用途を終了としないと出来ない。

並行分散処理の中でその物のプログラムは時々でも動いている関係上、(ほとんど意識に上らなくても)捨てられないことになる。逆に、長期的に見ると、「突然使っていなかったものを転用して使うことをひらめいたりする」のは、終わっていなかった証拠である。

 

4.「刺激を求める」

微妙で複雑な情報よりも、直截的で単純な情報のほうが入りやすいと考えられる。

逆に言えば、インパクトが弱い情報はビジーなシステムのなかでかき消され、紛れてしまって利用できない、もしくは「刺激の強さでウィンドウを呼び出す」ような形になっていると考えられる。

 

5.「過集中」

しばらくの間(刺激の強い)ウィンドウ以外のウィンドウが開けない状態」となり、刺激のあるプログラムだけが集中して動く状態と考えられる。逆に、ウィンドウを終了して閉じようとしても閉じられず、他のことが出来なかったり、パソコン自体の電源を落とせなくなったりする。時としてシステムがフリーズして、しばらくダウンして動かなくなったりするのが「虚脱」の状態だ。

 

6.「先延ばし」

基本的にいろいろなウィンドウ(プログラム)を乗り換えながら進むので、締め切りがある状況にそもそも合わないのに加え、

抵抗の大きいウィンドウを開き続けることが難しく、他の刺激の強いプログラムをぐるぐる巡回し続けるために起こる。

ADHDの脳の特徴をパソコンの画面の例で表現してみると、「ウィンドウは常時かなりたくさん開き続けていて、ウィンドウを閉じたり切り替えたりする機能がうまく働かなくなっている」と言える。

集中していないとウィンドウが勝手に切り替わって、入出力の情報がうまく処理できない

逆に刺激の強さでウィンドウを呼び出すと、今度は閉じられなくなり、システムがダウンするまで動き続けたりする。

入出力情報もウィンドウが不安定なため時々全く関係ないプログラムに入ったりして、逆にこれが奇抜なアイディアとなる

入出力情報は刺激が強いと複数、時には全てのプログラムに入ったりもする。

周囲の状況などの複雑で微妙な情報は、システムが基本的にビジーなため入力が間に合わず利用されない。

直截的で単純な情報だけが入力が有効で、また主に出力される。自分の感情でさえ、入出力情報としてウィンドウにつながりすぎるときと全くつながらないときがある。

  

 この脳の特性は、「安定したパフォーマンスは出せないが、状況や感情などの制限を受けないために、一時的には特定の目的に非常に高いパフォーマンスを生み出しうる」ということである。

不安定であり、自分でコントロールするにはかなり困難がある脳であり、この脳独特の働き方を考慮した有効な使い方のスキル(技能)が身につかないと、表面上ただ集中力が低下して落ち着かないという結果になってしまう。

 

使い方のポイント

      方のポイント

 

1.入出力情報を直截的で単純なものにする。

2.ウィンドウの切り替えの仕方を自分なりに工夫する。脳の外にメモなどで「目下の第一関心事はこれである」と何時でも確認できるように表示しておく等。

3.面白すぎるものにはハマリ過ぎないように注意する。

4.全く見られないウィンドウが生じないように、定期的に全部一回りするような点検をする。

5.周囲の状況や自分の感情などの情報が必要なときは、適宜意識的に取り入れて入力する。

6.上記のことを意識的に行う統括的なプログラムを出来るだけ回し続ける。

 

自他覚所見

他覚所見(周囲から見てどうか)

自覚所見(自分でどう思うか)

説明

行動原則全般

自分勝手で自己中心的、協調性に欠ける。他人の世話を焼く割には家族の当然のことをしなかったり、子供に露骨に不平等な態度を取ったりひどいことを言っても平気でいる。人の気持ちが分からない。

自分が納得するようにしか行動しない。先入観にとらわれず、自分の中では合理的で「必要」や「平等」を重んじる。過集中のときを除き、ほとんど感情的にならない。その場で思いついたことを何でも口にして、相手がどう受け取るか考えないでしゃべってしまう。「誰にでも親切」だったりする。

場の状況が分からないため。悪意はないのだが、通常の状況の中では(特に関係の深い家族からは)悪意に受け取られてしまうことが多い。

気分の変動(過集中と虚脱)

わがまま、ナメている、反省しない。(自分の好きなことは出来るのに嫌なこと、言われたことは全然しない)。

好きなことにはしか集中できない。分かっているのだが出来ない。過集中と虚脱のパターンとなる。

脳の働き方の問題で注意集中のコントロールがうまく出来ない。

片づけが出来ない。

片づけをしようともせず、また始めても途中で放置して、全くやる気が無い。

片付けの途中で注意が他の事に飛び、元に戻らない。頭の中では継続していて、「またそのうち続きをするつもり」であるが、実際忘れてしまう。

表面上は放置であっても、本人の中では一時中断であることが、そうは見られない。放置して実際忘れてしまうことも多い。

落ち着かない。

テレビのチャンネルをしょっちゅう変えたり、動き回ったり、落ち着きが無い。頻繁に引越ししたり、理由も無く転職したり、何回も結婚したりする。移り気、浮気者。飽きっぽい。

脳を働かせるために常に刺激を求める。その場その場の目の前の(刺激の強い)ことにしか集中できない。刺激が弱くなると集中を維持できない。

刺激がないと注意が継続できず、一生懸命であるが長期的には一貫性が無いことにもなる。

物を捨てられない。

使わないものまでずっと捨てないでいて、役に立たないゴミばかり集めている。勝手に捨てると激怒する。

いつか修理したりして使うつもり。「まだ使える」と思う。「自分の中では終わっていない」ので、勝手に捨てられると困る。

本人の中では「用途として終了」していないが、周囲から見ると不用品の放置となる。

先延ばし

大事なことを先に延ばし、他のどうでも良いことばかりやっている。不真面目。やる気が無い。

注意集中のコントロールが出来ず、必要なことに集中することがうまく出来ないため、なかなか取り掛かれない。

横着や悪意で先延ばししていないのだが、悪意や怠けにとられることが多い。

時間を守れない。

いつも時間に遅れ、反省もしない。

ギリギリまで準備に取り掛かれず、分かっていても遅れてしまう。相当集中してエネルギーを使わないとできない。

早めの準備などが注意集中のコントロールが効かずうまく出来ない。

文字通りの表現

「屁理屈」、「揚げ足取り」ばかりして話が通じない。強引な議論が多い。

言葉どおり理解して正直に一生懸命まじめに対応している。関係ない話に持って行って論点をはぐらかされている。

通常のやり取りの中で、常識で補えるために省略されている部分が分からず、文字通りの意味しか理解できない。

服装

異常に派手だったり、センスがおかしい。同じ変な格好を場所構わずどこでもずっとし続ける。異常に若く見える。年齢不相応の格好をする。

人に見られることよりも、自分で気持ちが良いという観点から服装の好みを決めていることが多い。服装に集中した場合には逆に徹底して見た目に拘る。

服装にも刺激を求める。見られることをあまり考えないことも多い。

真に受けすぎる。遠まわしな表現が通じない。思い込みがはげしい。馬鹿正直。

冗談も真に受けすぎて理解できない。冗談にも怒り出したりして気が利かない。気配りや遠まわしな表現が通じない。思い込みがはげしい。皮肉が分からない。自分に不利になるようなことまで正直に言ってしまったり、見えないところまで徹底的に拘ったり、「馬鹿正直」な面がある。ずるいことはしない。

なんでも本気で受け取るため、からかわれたり冗談で言われているのが分からない。「言いたいことがあるならはっきりそのまま言え」と考える。からかわれると非常に傷つく。徹底して合理的で、正直で、事実を曲げることは出来ないことが多い。情緒と切り離して考えるため自分の立場とは関係なく質問に答える。「ずるい」発想はそもそも考えもしないことも多い。

状況が分からないため冗談とまじめな話の区別が出来ない。また自分のために有利(不利)であることを分からないで話したり行動したりする。

突然キレる。

突然キレて暴れたりする。怒りっぽい。感情のストップがかからない。

拘ったり過集中しているときに、無理やり干渉されると、非常にイライラして激昂したりする。

過集中の時に割り込まれると脳の働きが不安定になり、気分が急に変動する。


ADHDとアスペルガーの比較

 

ADHD

アスペルガー(AS

説明

行動原則

納得しないと行動しない。合理的で情に流されない。変化を好む

納得しないと行動しない。自分のこだわりに忠実。保守的。

ASは不合理でも押し通す。ADHDは多くは極端に合理的。

気分の変動

過集中と虚脱のパターン。過集中が短く単発的で激しい。

過集中と虚脱のパターン。過集中が長引く。

ほぼ共通するが、過集中の時間が違う。

多動傾向

刺激を求め頻繁にチャンネルを変えたりする。新しい物好き。引越しや転職、結婚を繰り返したりする。

子供のときにはあり。一つのことを保守的に続けることが多い。同じものを着続けたりする。

ADHDは移り気で多動、ASは保守的。

注意欠陥

時間を守れない。物を忘れる、失くす。非計画的。

時間は守る。決まりきった計画は出来るが、臨機には対応できない。

ADHDは場当たり的に不注意。ASは変化に弱い。

意思決定

不安は少ない。合理的・現実的・実際的・近視眼的。

迷う間は苦しむが、「覚悟」の形をとる。後悔はしない。

ADHDは「悩まない」。ASは「後悔しない」。

自己評価

不適応で低下する。悩む。多くがACになる。

不適応でも低下しないことが多い。悩まないが、身体症状で苦しむ。

ADHDは意識のレベルで悩み、ASは自覚しないが神経症的となる。

対人関係

全体に希薄、ドライ。情緒的に関わらない。一緒にいることが全て。極端に割り切ることが出来る。

愛着か無視かの両極端。命がけで愛着する。絶対服従か支配かになることが多い。

ADHDには人に対する執着は乏しい。ASには激しい愛着がある。

状況理解

「相手の気持ちが分からない」自分を有利にするための嘘はつかない。

正直、純粋、不器用。

情緒的でなく合理的。

状況は分かるが独特の理解をする。自分のこだわりに忠実。

自分を有利にするための嘘はつかない。正直、純粋、不器用。

「空気が読めない」とは言う。

ADHDは「分からない」。

ASは「納得しない」。

片付け

分からなくなり物を失くす。「片付けてもらえるのはいいが捨てないでほしい」。

一見乱雑でも物のありかは分かっている。「片付けられると無くなる」。

見掛けは似ているが、かなり意味合いが異なる。

物へのこだわり

物を集める。捨てられない。道具など実用的な物が好き。

愛着を持つ。自分の思い出などの象徴的な物への思い。

ASの場合は愛着、ADHDは実用。

物を捨てられない理由

「まだ使えるから」と言う。物の立場からの理由付け。

「(自分の思い出などの)思い入れがあるから」と言う。

ADHDは物の立場から、ASは思い入れとして捨てられない。

抽象性

あまりない。現実的・実際的・即物的。「空気は読むものではない」。

独特の抽象的、詩的世界を持つ。「空気が読めない」と言ったり。

ADHDは即物的、ASは詩的。

「文字通りに受け取る」

即物的に文字通り。現実的だが状況の部分が欠落。

言語的、字義的に文字通り。言葉に忠実で厳密。哲学的。

ADHDは即物的、ASは言語的、字義的。

強迫症状

時折見られる。(ACの場合など)

多くに見られる。ストレスで悪化する。

ASには多く見られ、ストレスで悪化する。

聴覚過敏

あまり目立たない。

多くに見られる。嗅覚なども。

ASには多く見られる。

偏食

一定しない。主婦になると、同じものしか作らない。

特徴的な偏食が見られることが多い。肉類や味の濃いものが好き。

ASには偏食が多い。

顔つき

目が離れてえらが張り、ネコ型の顔が多い。

細面に切れ長の目、あごが尖る。

(経験的に見られる)

服装

女性は派手。年齢不相応に若い。

地味で、モノトーンなどが多い。同じデザインに拘る。

(経験的に見られる)

キレる時

過集中で脳が疲労しているとき。過集中を中断させられたとき。不合理を強制されたとき。

過集中やこだわりを中断させられたとき。愛着が妨げられたとき。

ADHDは「暴発」。ASは「反発」。


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