【はじめに】
注意欠陥や人に執着しない特徴などは全く同じであり、どう考えてもADHDの仲間であるのだが、物事の考え方が異常に表面的で、合理的な話が通じにくい特徴は他のADHDと大きく異なり、経過もケアもかなり異なる一群のADHDがいて、私は上記のように名づけてきた。このADHDはモラハラ、パワハラ、虐待などの加害者になることが多く、ケアもかなり異なることため、私は他のADHDとは分けて独立した発達障害のグループとして扱うことを考えた。以下に説明を試みる。
【基本特徴】
1. 異常に表面的な考え方。例えば極端な学歴至上主義や、ブルーカラーへの強引な差別など。周囲の人を馬鹿にすることが多く他者を決して褒めない。
2. 自分の価値観が全てで、周囲の全員にしつこく繰り返して主張し続ける。自分の価値観以外の考え方が存在すること自体が理解できない。
3. 自分の行動が、状況により相手から見ると全く違う意味を持ちうることを全く想像できない。周囲の他者の気持ち、意志などを認識できない。
4. 自分の評価にはこだわり、無理のある言い訳を繰り返して自分が悪いことは一切認めようとしない。合理的でなく非常に情緒的。
5. 「人には執着しない」「極端に割り切ることが出来る」といったADHDの基本特徴は同じで、人に愛着が無い点でアスペルガーとは全く違う。
6. 「ADHDのAC」になることはあるが、自己評価は下がらず、自己正当化を続けるため周囲に攻撃的となり、周囲から見ると非常に困った人になる。
7. この他の特徴については他のADHDと基本的に変わらない。
【様々な経過】
自己正当化型ADHDも、例えば小さい頃から「あなたの考えは?」と本人の考えを聞き、いちいち根拠を示して合理的に説得する試みを続ける等、「合理的な環境」では、他のADHDと同じように合理的なADHDになることは可能だ。
しかし他のADHDがはじめから「無私」「無差別」の合理的な志向を持つのに対し、教育と本人の努力無しには合理的な考え方や「相手から見たら異なって見える」ことの理解は困難である。
したがって、自己正当化型ADHDが甘やかされると、何でもゴリ押しする「ジャイアン」となり、強引に言い張って主張を通すパターンを続け、大人になってもモラルハラスメント、パワーハラスメントなどの加害者となる。
逆に親から強引に押さえつけられると、「自己正当化型ADHDのAC」となるが、基本的に自己評価は下がらず、「自分が被害者であることをアピールする」ことをしつこく続けることが多い。
ACから回復することはあるが、その後は上記の「ジャイアン」に戻る。
【ケア】
成人の自己正当化型ADHDはそれ自体のコーチングやケアに乗ることは少なく、子供のACや様々なハラスメントの加害者として問題になることが多い。ADHDの診断も否認することが多く、根拠も無く「診断した医師が間違っている」と主張することも多い。
子供も成人も、ケアとしては、「他者から見るとどの行動も本人の意志とは別の意味を持ちうる」「自分の価値観は絶対ではない」ということを丹念に合理的に説明していく他は無い。特に子供のときに合理的な接し方(本人の意見を聞き、根拠を述べさせ、その根拠で正否を判断する。逆に本人にはきちんと根拠を示して反論することを続ける)をすることは大事である。
成人のケースでは、意味のあるケアは、「被害者を逃がすこと」しか出来ないことも多い。