AC、人格障害関連

妄想の意味

 私は時々壮年期以降に突然妄想が出現する「退行期妄想症」と呼ばれるケースに出会う。妄想性障害、妄想性人格障害などとも近いけれど、これらの妄想には意味があるように思う。

 例えば老年期に入ったケースでは、「腰が痛い、胸が痛いのは毒ガスのせいだ」等、「自分に不利な(加齢や病気等)状況を否認しつつ同情はしてほしい」という風に理解が可能で、要は自分が衰えていくことを受け止め切れないことが問題の本質であろうと推測している。

 あるケースは目もほとんど見えなくなり、妄想相手から反撃されひどい目にあって入院し、その後不本意ながら老人ホームに入って落ち着いた。老人としてケアされることで妄想の必要は消失したのだと思う。

 だから私は、良く効く薬で治す予定の時も、「妄想が消えて現実の世界に軟着陸するための道筋」を本人に用意し、本人から見ると「妄想のストーリーが自然に自己完結して終わった」と出来る様な準備をするように周囲の人にお願いする。

 例えば妄想の相手であった張本人が「改心したから」でもいい。そのために「改心する」ようなイベントにタイミングよく参加してもらうなどの協力を要請する。本人の認知が現実の世界に大きな断絶無く復帰できることが大事だ。

 乱暴に妄想を治すと、逆に認知症の世界に入る可能性大であるように思う。「治す時の治し方が大事」である。

 http://www7.ocn.ne.jp/~k-goto/

 


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