ADHD関連

発達障害と人格障害4.自己愛性人格障害

DSM‐Ⅳによる自己愛性人格障害(Narcissistic Personality Disorder)の診断基準

誇大性(空想または行動における)賞賛されたいという欲求、共感の欠如の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち、5つ(またはそれ以上)で示される。

1. 自己の重要性に関する誇大な感覚。自分の業績や才能を誇張する。
2. 限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。
3. 自分が特別であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人(権威的な機関)にしか理解されない、または関係があるべきだと信じている。
4. 過剰な賞賛を求める。
5. 特権意識、つまり特別有利な取り計らい、または自分の期待に自動的に従うことを理由なく期待する。
6. 対人関係で相手を不当に利用する、つまり、自分自身の目的を達成するために他人を利用する。
7. 共感の欠如。他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。
8. しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。
9. 尊大で傲慢な行動、または態度。

 7.「共感の欠如」、6.「不当に利用」というところはジャイアン型ADHDの根本特徴に一致する。
 私はジャイアンかASか診断に迷ったときに、「他人に利用されたり利用することは認められるか?」と聞くことが多いが、「お互いに利用するなら良い」と答えればジャイアン、「利用は駄目です」と答えればASと大体言える。
 
 2.3.と5.7.はファンタジーの世界に引きこもったジャイアンが良く見せる姿だ。または、ジャイアンの高すぎる自分に課している基準を、つい漏らしてしまったときに、それが他の人から見えるのはこういう姿だろう。(1.4.も)。
 
 親よりも優位に立とうと言うことを聞かないジャイアンの子供も、ほめれば単純に調子に乗ってコントロールされる。
 それを利用して親が、「あなたは頭がいいのだからとか親バカ半分で「あなたは優しいから」などと周囲を「見下す」形で我慢をさせるパターンを教え込んでしまう、(または親のそういう面を真似する)と、「ほめられるために我慢する」という衝動コントロールを身に着けて成長する。
 私はこのタイプを中心志向型ジャイアンと呼ぶ。

 可愛い可愛いとほめられたジャイアンの女子はずっと可愛くあり続けなければならない。
 成長してその手が使えなくなってみんなが注目してくれなくなると、「太っているからいけないんだ」と思い込んで摂食障害になったりする。
 
 8.私にもこの一面はあるが、他者が賞賛される姿を見て素直に喜べないこの醜い妬みは中心志向型ジャイアンの最大の特徴だ。

 ちなみにASでは、「受動型ASが愛着の相手に要求する自分への服従と賞賛」はこれに似ている。

 愛着の対象に対しては9.であり3.5.であり、1.であり2.であり、限定的に8.も見られるが、6.7.に関しては「あまりにも理不尽なために愛着の相手のほうから見てそう見える」ことはありうるだろう。


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コメント

    • あまがえる
    • 2011年 1月 20日

    他人に利用されるのは全くもって良い気持ちではないし、お互いさまだからといって了承できないです。ということはASぽいと判断できるわけか。

    • のりまき
    • 2011年 1月 20日

    新年明けましておめでとうございます。今年も引き続き、先生のブログを読んで自己ツッコミをわすれずやっていきたいと思っております。
    既存の人格障害の診断基準をもう一度見直す必要があるということなのでしょうか。結果は同じでも原因は違うというのはややこしいですね。

    • nao
    • 2011年 1月 21日

    上手に気持ちよく相互利用した方が合理的なのに、、というわたしの考えが全く理解できない、とわたしの夫は申します。
    その理由がわかったような気がしてホッとしました。
    同じ言語を話す同じ人種でも、脳のどこかは全く異なるものなのですね~。
    人間って面白いです。興味深い!

    • ちひろ
    • 2011年 1月 21日

    私の場合、自己愛は強くても苦悩してません。
    愛着魔法がかかれば、カボチャも馬車になります。都営住宅も「愛のお城」です。
    そのせいか、優越していなければ(死ぬほど)苦痛だという、誇大な自己愛からくる劣等感に苦しんでいる人の神経逆なでしてしまう時があるようです。
    以前どこかのコメントにあった、「もぐらたたき」のもぐらです。
    そして、ときどき命がけでライオン様をからかったり・・・。
    ・・・
    ライオン様の子分が作戦盤をもってきて、ざっとしゃべって消え去りました。攻める方向すら言わず、何のことかさっぱりわからない。そのままゲームを始めたら、それが今日の練習テーマのキックオフの戦術でした。
    何も知らずにスタートしたら、戦術を理解していないことをコーチの怒られたのです。
    あの後、練習が終わって家に帰る途中で夜の公園に忍び込み、小さな植木一本、30分以上かけて泣きながらばきばきに折ったほど怒りを抑えられなかった・・。(犯罪だ~!)
    (今思うと、これは私の「こだわり」を台無しにされた怒りです)
    それを根に持った私は、その後、親分に仕返しをしました。
    仕返しといっても、公式試合中にサイドにバスを出すように前線から指示をだしただけですが。
    もぐらなんかに死んでも命令されたくないライオン様は「なんでだよっ!!!!」と吠え、予想したとおり要求には従わない。するとコーチが怒鳴りました。
    「サイドにだせ!」と。当然です。敵ディフェンスが崩れていたので、あの時、練習したパラレラという戦術を使えば、余裕でフリーでの2対1のシュートまでもっていける状況でした。ライオン様は、結局もたもたして敵にボールを取られ、絶好のチャンスを台無しにしたのです。
    この試合の後から私の気持ちが変って行きました。
    褒められたことじゃないですが、ボーダーもぐらの穴ぐらの中であれ、一矢報いた気持ちになって、
    「ママサルなんて、もういいや」と、ようやく思えたのです。
    (こうやって文章にすると、どっちもどっちのアホな話です・・。)

    • のりまき
    • 2011年 1月 22日

    私も自己愛性の虚栄心の強い人には必ずといってマークされ、忌み嫌われます。最初彼らはむしろよってくるのですが、途中から蛇笏の如く嫌われます。小学校の頃はそれで痛い目にあいました。私は中間層に属したいのに、、、といつも思っていました。
    多数派も発達障害も関わりなく、自己愛的な人達はゼクトにも似た親密さでグループを形成します。自己愛と自己愛は惹かれあうのかなと思います。しかし翻ると私自身、自信過剰だし中心思考だし、自己愛的だと思うので、なぜ私だけが常にマークされてしまうのかと不思議だったのですが、先生のブログを読んで最近理解が進んでいます。
    上記の自己愛の人は心の支えを常に他者との関係に探す、とても情緒的な人達だと思います。私の場合、自己愛が自己完結していて、グループを必要としないところが彼らにとってまずいのではないかと思います。私を支えるのは他者というか、実は自分のやり遂げた成果という抽象的なものです。だから他人を利用するのも嫌い。なぜなら自分の能力の証拠にならないし、公平じゃないから。だからとんでもない自己愛者です。こういう考え方は恐ろしいと思い、最近はパートナーも得て考えを変えつつありますが、それでも普通の人に比べるとまだまだ。。。
    彼らは自己愛的な私を見て、下につくか、上につくか、いずれにせよ階級に位置づけようとして近づくのではないかと思います。私の下につこうとする人は絶対的に支配してほしいのに、私は他者を情緒的に必要としていないことに気がつくから傷つくし、私を下につけてかわいがってやろうとしても、偉そうに意見をしてくる。こうやって憎しみが生まれるのではないかと思います。多数派の普通の人達からは、もうあなただからね。。。という超法規的存在として扱われ、好かれますが。
    プライヴェートでは自己愛性の人(自分もそうだからすぐわかる)を見たら即逃げることにしていますが、職場となるとそうもいきません。ネットで読んでも中々これという対処法がないし、先生にいつか自己愛性の人の対処法を教えていただきたいなと思います。彼らに目をつけられないような。

    • nori
    • 2011年 1月 23日

    NHK大河ドラマ「江」が始まりました。
    どうしても織田信長という人物に注目してしまいます。
    織田信長をジャイアンという観点で見ると人間像がすっと理解できます。
                               妹の旦那の浅井長政を殺害→「非情さ」
    大策略家であるにもかかわらず重鎮に暗殺される→
    「物事に対する洞察力の高さと人間に対する洞察力の低さの非対称性」
    一農民を重鎮まで登用→「平等性」
    己を信じる自信→「自尊心の高さ」
    気の短さ→「攻撃性」
    織田信長という人間を多数派の人が見ると
    「なぜあんなに切れやすく非情なのにもかかわらず、一農民を重鎮もでに昇格させたりするのであろう」という
    アンバランスさを不思議に思ったりする人が多いかなと思ったりするんですが、ジャイアンであったと言うとすんなり理解できる気がします。
    織田信長という人間は
    「はだかの王様でいつづけられる環境に恵まれかつ知力の高いジャイアン型ADHD」だったような気がします。
    それと信長は母に愛されなかったという話を聞きます。
    信長の母もまたジャイアンだったんでしょうか。

    • うにゃ
    • 2011年 1月 24日

    >「あなたは頭がいいのだからとか親バカ半分で「あなたは優しいから」などと周囲を「見下す」形で我慢をさせるパターンを教え込んでしまう
    私は、自分自身にこういう暗示をかけて人格障害な両親を「キチガイ」だと見下してきました。
    両親に「バカ」「死ね」と言い続けられて、腹いせに目の前で自殺したい衝動や親への殺意を抑えるために行き着いた手段です。
    いつの頃からかはっきり分かりませんが、中学生の時には完全に「キチガイがおかしな事を言うのは当たり前」という考え方が確立していました。
    今振り返ると、「自分はバカじゃない」「自分は死ぬべきじゃない」という生まれ持ったジャイアン的自己愛がもとになっいたんだと思います。

    • ちひろ
    • 2011年 1月 24日

    違った・・。私は苦悩してます。
    対人不安も、被害者意識も、自分探しも、コメント投稿もすべて「自己愛」です。
    座り込んでただ「自分」を考えることに膨大な時間を消費して、得た果実は「怠惰」と「苦悩」だけでした。

    • ちひろ
    • 2011年 1月 24日

    (追加)
    それに気付いて、私の心から消えていた「自分のことばかり考えるな」という、使い古された言葉が帰ってきました。

    • うにゃ
    • 2011年 1月 24日

    「見下す」形での我慢・・・父親について少し説明がつきそうです。
    以下、父親の視点を想像してみます。
    二人の幼い子供を残して妻が交通事故死。
    その数年後、見合いで再婚したが、後妻は全く言うことを聞かず気に入らない。
    後妻の一挙一動、一言一句が癪にさわる。
    夫の言うことを聞かない女に手を上げても当然だ。
    しかし、癪に障るたびに殴っていては世間体も気になるし、
    後妻は全く反省もしない。
    腹の虫をどうやって抑えよう?
    そうだ、この女は血筋が悪くてバカだから俺を怒らせるのだ。
    この女には、そう言ってやらなきゃ分からない。
    そうこうしている内に「血筋が悪くてバカな」後妻との間にも子供ができてしまった・・・。
    トラウマが疼いてきたので、父視点はひとまず、ここまで。
    母親からの影響だけを考えると、私は母に絶対服従する一方で、他人に対しては「自分の意思を通すためなら手段を選ばない」という状態の、いわば「母のコピー」のような人間になっていてもおかしくない。
    ところが「母のコピー」にはならず、合理的強迫的な面を持ち続けていたのは、「父にバカにされない。バカにする口実を与えない。」ように生きてきたからか?
    ・・・と、こんな仮説を立てています。

    • うにゃ
    • 2011年 1月 24日

    自己愛性人格障害になるほど中心志向の強いジャイアンが、
    「はだかの王様」から転落したとき、「妄想性人格障害」へ移行することはありませんか?
    休職の直接の原因となったモラハラ上司が、これにあたる気がします。
    強烈な中心志向&お姫様症候群から、昇進の行き詰まり&老化という現実(本人にとっては被害?)への鬱憤を、私にぶつけていたような。
    (部下がどんどん去り、最後の部下が私でした)
    私も、出社できなくなるほど追い込まれる前に逃げれば良かったのですが。
    いま振り返ると、2010.02.03 22:12の記事「行き違い共依存」のイネイブラーになっていたのかも・・・
    同じ事を繰り返さないために、もっと考えてみます。

    • ちひろ
    • 2011年 1月 26日

    夫がコーチであるという立場で集団の主導権を握っていたライオン様は、通常なら細分化したり当番制にしたりする雑務をひとりで抱え込み、あれほど偉そうに怒号で命令してくるわりに、ビブスの洗濯等を私に頼むことができません。
    そのように最初から自分のまわりに「自分が利用されるシステム」を作り上げてしまってるライオン様にとっては、賞賛しないもぐらは許しがたい盗人ってことです。
    このもぐらたたきで瀕死になってしまった私はすこし成長しました。
    新しい職場にもライオン様が生息していたので、日々「賞賛」というエサを献上させてもらってます。
    時には人を利用することも、悪口を言うことも、いじめにのることも、人間関係を円滑にする弱者の知恵でした。
    それが嫌なら本当の意味で「強く」なるしかないと思っています。

    • ちひろ
    • 2011年 1月 26日

    あと・・
    私は「はだかの王様」が転落した時は、心が壊れる時だと思います。ひとつの魂が生きるための人格障害です。
    私もいまだに自分が一番愛した、壊れた魂の一部を抱きしめたまま夢の中で生きています。
    ・・なんて書いてみて・・
    実際は子供が私立大、私立高校に入学する予定で、怠惰な二重生活をするにも、いいかげん資金がつきたという現実問題が発生し、さっさと供養を終えなければと焦っています。
    (結局そこかよっ~!!!!!)

    • メグ
    • 2011年 1月 29日

    私の両親が発達障害と自己愛性人格障害持ちです。
    私自身は発達障害ではなく、自己愛性でもないと思うのですが、そういう両親に育てられたためか、たまに人を利用しようという考えが強く出てしまって人間関係が難しいと思うことがあります。
    大人になった今となってはそんな親を可哀相に思ったり、反面教師にしようと思ったりですが・・・。
    まぁ、お手本となる親がいなかった私もかわいそうですよね・・。なんて、思ってみたりして。
    発達障害の両親から「あなたは異常だ」と言われ続けて、とうとう自分で自分の事を異常だと思い込んでしまった自分ですが、そろそろそんな両親への服従から卒業しようと思います。
    きっと両親は自己愛から自分の子供の事でさえも素直に喜べなかったのですね。

    • 並インコ
    • 2013年 4月 19日

    私の知っているジャイアン2人は、普通に生きていれば容姿だけで十分得をするのに・・・何かしら苦しんでいます。。容姿だけで十分うらやましがられているのにな・・・。

    • 道産娘
    • 2013年 8月 16日

    この記事参考になりました。
    >6. 対人関係で相手を不当に利用する、つまり、自分自身の目的を達成するために他人を利用する。
    >7. 共感の欠如。他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。
    また受動型AS知り合いの話になりますが、6.はそう見えなくもないですが、元々正直な人で「謙遜しないだけなんだなぁ」と思ってました。(個人的に正直な人の方が安心できるので…)
    ただ、度々「社会を相手取った発言」がみられ、社会貢献のために他人を利用し、賞賛を浴びることを目的としているように思う時があります。
    7.はあります。
    本人は「感謝されて当然」と思っていたようですが、どうも一方的に(彼が正しいと思う)価値観を押し付けられることがあり、ついこの間も「余計なことしなくて良いから」と話してました。
    元々相手の気持ちが分からないようですが、機嫌を取ろうとするので「気づこうとしない」わけではないと思います。
    時折(おそらく、私が思い通りに動かないことに対する)イライラした気持ちが態度に現れて伝わってきますが、きちんと話せばこちらに合わせてくれるところは他のASの人と変わらないなと思いました。

    • 道産娘
    • 2013年 8月 17日

    …と書くと他のASの方達に失礼なので、やっぱり撤回します。
    「きちんと話せば分かる」というのは、私の勘違いだったかもしれません。
    私に合わせていたのも、場当たり的に機嫌をとっていただけで、私の言うことを理解してくれた訳じゃなかったんだと思います。
    きっと非言語的なもの(表情や口振り?)の方に敏感なのでしょうが、合理的な話が通じず、言葉で理解して貰えないというのは大きな壁ですね。
    結構彼に対して酷いことを言っているつもり(例えば、あなたの支配欲求を満たすために私を利用しないで下さい!・それは嫌がらせか?等)ですが、攻撃というより、私にそういう言い方をされることが不思議で仕方ないらしく、いつも驚かれます。
    攻撃性が抑えられているだけ、まだ安心できるかな…といった感じですね(^_^;)

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