AC、人格障害関連

炭酸リチウムについて

(今回は医師らしい話題で、おおごとになる可能性があるので)。

 「炭酸リチウム」という成分の製剤にはメーカーごとに何種類かある。代表的な「先発品」は「リーマス」(大正製薬)で、ジェネリック医薬品(後発品)は数種類あり、これらの中の一つ「炭酸リチウム アメル」(共和薬品)という後発品が11月中旬にメーカーの「自主回収」になった。

 まず「炭酸リチウム」という物質は海水や海草の中にも含まれる自然の成分LiCO3で、それを濃縮したものがこの薬だ。 
 躁うつ病の気分の変動に非常に効果があり、頭の働きを悪くしないので私は多用している。
 ジャイアンにもASにも「情緒的に振り回されても冷静さを保てる」という効果がある。ACの認知が薬で改善したりもする。

 非常に効くが、飲みすぎると「リチウム中毒」にもなる怖い一面があり、そのために年に数回採血して「リチウム血中濃度」を測定する必要がある。血中濃度を見ながら増減して調整する。

 上記のジェネリック(後発品)の一つ炭酸リチウム「アメル」200mg錠剤は、「溶出が悪い」という理由で自主回収になった。要は、「飲んでも吸収されにくい」ということになる。

 実際私が処方してこの薬を飲んで血中濃度が上がらず、「おかしいね」となっていたケースはかなりあり、本人が実は薬を飲み忘れているのかなどと考えていたが、実際は薬が不良品であったのだった。

 私の勤務する病院でも、院外処方の薬局でも、自主回収になったのでいっせいに「リーマス」などの先発品や他のジェネリックに切り替えになった。
 
 ここからが怖い話。私は「リーマス」に切り替え後にすぐに血中濃度を測ってみたのだが、今日分かったケースでは0.8から1.5と急上昇し、その人はリチウム中毒の症状である「粗大な体の振るえ」を訴えていた。

 起こったのはこういうことだ。以前の炭酸リチウム「アメル」は吸収が悪かったので、血中濃度が上がらず、そのために処方量を多くしていた。

 それが、先発品リーマスに切り替わり、吸収が良くなったので、同じ量の処方でも急に血中濃度が上昇、中毒になりかかっていた。

 薬局によって違うけれども、大体11月中旬頃に切り替わっているので、その後に調剤された薬を飲んで急に手などが振るえた場合は、すぐに病院に行って血中濃度を測ってもらってください。

 それが間に合わない場合は、まず薬局に電話で相談して、上記の切り替えになっていることを確かめた上で、一日に4Tなら3Tに、6Tなら4Tくらいに暫定的に減らしておいて次回主治医と相談して下さい。

 手の振るえは細かくなくて粗大な振るえとなる特徴があります。甲状腺障害や腎障害が起こることがあるので、血中濃度を測るついでにこれらの検査もしておきましょう。


関連記事

  1. 「先延ばし」のうつ状態
  2. 精神疾患に見える発達障害シリーズ⑦
  3. 責任の観念
  4. 発達障害と感情調整薬
  5. 反応と制御
  6. コーチング②ADHDの言語表現
  7. ASの愛着のミスマッチ
  8. ジャイアンと境界例②

コメント

    • うにゃ
    • 2010年 12月 10日

    炭酸リチウム錠200「ヨシトミ」も、同じ理由で同時期に回収になってますね。
    「アメル」と製造ラインが共通(どちらも全星薬品)のようです。

    • ネック
    • 2010年 12月 24日

    炭酸リチウムですが強い薬ですね。
    発達障害者は薬ですが必要ないですね。
    昨日、高山恵子さんがTVに出ていました。2010年の12月22日、23日です。
    成人発達障害者について大きく取り上げていました。
    特に、成人発達障害者ですが谷間がありますね。
    京都などでやっていて遠くから通っている県の人もいます。
    YANBARU先生が受診している地元でも成人発達障害者の集まりがあります。月に1回(第1or2水曜日)「ただし、第1水曜日に出来ない場合は第2水曜日です。」です。
    話が出来る所が増えると良いですね。 沖縄市内
    親などに話せなくても第3の立場に話せば理解が出来る。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP