AS(アスペルガー)関連

コーチング②ASの言語表現

自己コーチングガイド各論② ASの自己理解そのC (言葉の表現の特徴を理解する)

C.AS特有の言語表現の特徴を理解する。

 多数派はコミュニケーションの場において、他者の表情や口ぶりなどの非言語的情報から「状況」を多数派流に直感的に察知し、言語的情報はむしろ表面的で、しばしば本心と異なる「建て前」という形で現れる。

 これに対しASは、非言語的な直感的な状況察知は(時には鋭敏すぎるほどに)出来、逆に非言語的な表現も出来る。ただそれが「AS独自の理解とAS独自の反応」であるところが異なる。

 また、もともとのASの認知の特徴である「細部に細かくこだわる」、「記憶力が非常に良い」、「ゼロか百かの極端な思考」等も理解されにくい理由のひとつだ。

 ASからの表現はまた、「独特の詩的、象徴的」な表現が多く、多数派とは別の意味で「全てを言わない」ところがある。

 このために多数派から見ると奇異と映るいくつかの特徴が現れる。例えば「(多数派流の)冗談や遠まわしな表現が通じない」、「話が長くて細かいところにこだわりすぎ、話の大筋が分からない」、「極端な表現が多くて乱暴な印象を与える」等だ。 

 このようにASの言語理解、言語表現は、多数派と根本的に異なる認知の特徴に根ざし、また独特の詩的・象徴的表現を伴う「独特の文化」であるため、多数派にそのままの言葉が通じることはむしろ例外的であり、自ずから「通訳が必要」ということになる。 

 あなたの生活で上記の説明に当てはまることがありますか? 具体的に書き出してみましょう。

 この言語表現のスタイルの違いがあるので、多数派とのコミュニケーションに行き違いが起こることはむしろ当然で、この行き違いを予防するためには、相互の理解が必要である。

 ASの側から出来ることは、当然「少数異民族の性として二ヶ国語を覚える」 という作業となる。

 「多数派の文化を理解し妥協しないマイペースで理屈っぽく気難しい人」くらいのイメージで理解してもらい、多数派流の状況理解を当たり前に要求されないようにする」、「なるべく重要なコミュニケーションを一対一の形で行うようにする」という実践的な方法とともに、多数派のコミュニケーションの特徴を観察し、理解することが重要となる。

 中でも、「多数派の言葉は多数派流の状況理解の情報を追加して理解しないと、AS流の状況理解では必ず誤解となる」ということを理解しておくことは最も重要である。

 特に非言語的な表現は、もともと不明確である上に、コントロールが難しく、誤解の悪循環に陥る可能性が大であるので、なるべく言葉で確認することが安全である。

 もともと多数派流の状況理解は異文化であるから、「断定しないで置き、事後的に信頼できるサポート者に聞いてみるほうが無難である」ということになる。   

 上に書き入れたあなたの困難さに対して、上記の工夫を具体的に考えてみて書き入れてみましょう


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コメント

    • まーちん
    • 2006年 11月 14日

    多数派特有の社交辞令、よくわかりません。
    だから、性格のよくわからない相手(仕事だけのおつきあいとか)に
    <飲みに行きましょう>と言われた場合、
    社交辞令なのか、本気かどうかよく悩みます。

    • ALIVE
    • 2006年 11月 15日

    AS当事者の視点からみた「ASの言語表現」私見
    言語は一般的なコミュニケーションの場において、もっとも使用頻度の高い形式です。
    そのような場において「AS独自の理解とAS独自の反応」は私自身とてもやっかいです。
    通常使われている共通言語・意識の理解範囲を超えているかもしれません。
    言語表現は生き抜く上で重要なので、つねに学ばなければなりません。
    >「細部に細かくこだわる」
    通常の会話の場合、先に全体像が示されることはまずありません。
    AS当事者にとって会話は動的で、流れ行くものです。
    (文章のように固定化されていないため、読み直す(再生)事はできません。)
    そのためまったく予想のつかない状態になるので、そのような場面に
    即座に対応する能力が低い事は事実です。
    それゆえ、AS脳は、防御システムとして会話の限定空間を構築し(細分化)
    内部の混乱を避けようとするのかもしれません。
    その根拠としては、細部はどんなに変化が起こっても、細部ゆえ限定された
    変化です。言い換えると、自身で対応・把握できる変化になります。
    この特徴をうまく使えば、ひとつの事をじっくり時間をかけて最後まで成し遂げる
    資質と合わせて、翻訳業とか作家業等でおおいに役立つと思います。
    >「記憶力が非常に良い」
    確かにASは何10年も前のことを、明確に思い出します。
    それゆえ、一般的に「ASは記憶力が良い」と言われていますが、私の場合は
    記憶力ではなく「記憶容量が大きい」だと思います。
    なぜならば、それらは必ずしも時系列ではなく断片化され、本人の意思とは
    無関係に再生される場合があるからです。
    (記憶容量の大きさは、刺激入力を取捨選択できず、全刺激を受け取ってしまう事に
    対応するための必然的機能なのかもしれません。)
    この記憶容量の大きさは、一つの事をきわめるのには適していると思います。
    ・・・続く

    • ALIVE
    • 2006年 11月 15日

    ・・・続き
    >ASからの表現はまた「独特の詩的、象徴的」な表現が多く
    確かにAS者は、具体的な表現を求めるわりには、「独特の詩的、象徴的」表現をします。
    これは発達の過程で、言語を独自の形式で獲得してしまったことに起因します。
    確かに、他者には伝わりにくい言語表現をします。
    そのような場合、意味が通じなかった部分を具体的に指摘していただけると、助かります。
    >多数派とは別の意味で「全てを言わない」ところがある。
    私の場合、納得できていない、分析が完了していない、断定できていない感情の
    部分は、鍵付きの引き出しにいれて、誰も侵入できないように鍵をかけています。
    その部分は他者に気がつかれないようにさえしています。
    自己防衛の一つだと思ってください。私にとって世界は危険な場所です。
    でも、信頼関係ができあがれば、変化します。安心すれば変化します。
    性急に接しないで、時間がかかる事を前提に接していただければ、変化します。
    >「話が長くて細かいところにこだわりすぎ、話の大筋が分からない」
    私自身の場合は、事前にノート等に話の大筋を書いておいて、コーチングを受けています。
    この方法は、事前に目的がわかっていれば有効ですが、一般的な会話では話がどこに
    いくのかわからないので、ノート作戦は通用しません。
    ですから、「あなたの話のこの部分がよくわからない」と具体的に指摘していただけると
    AS当事者の助けになります。他者世界理解への手助けになります。

    • ALIVE
    • 2006年 11月 16日

    「困難さへの対応策」私見です。
    >ASの側から出来ることは、当然「少数異民族の性として二ヶ国語を覚える」 という作業となる。
    これ以上の的確なアドバイスは無いと思います。
    が、バイリンガルになるためには、若いうちから意識して、適切な療育を受けていない限り困難です。
    (ぼくのアスペルガー症候群―もっと知ってよぼくらのことを ケネス・ホール様のような療育環境
    個人の資質、状態に合わせて勉強できる環境を選択できるのは、発達障害あるなしに関係なく
    まさに理想的な教育環境です。)
    私には「下手に努力した場合、かえってそのストレスによって周囲に迷惑をかける結果になる」
    という発達障害の重大な真実の方が現実です。
    しかしこれも逆手に使えれば、多数派世界に影響されえない独自性をもったアーチストや
    作家や研究者として存在できうる可能性があります。
    (もちろんサポーターや、その作業に適した環境は必要ですが)
    >もともと多数派流の状況理解は異文化であるから、「断定しないで置き、事後的に信頼
    >できるサポート者に聞いてみるほうが無難である」ということになる。  
    そうですね。AS当事者の生存原則として、信頼できる相談相手、サポーターという
    存在は必要です。
    ではどうやって信頼できる相談者を探すかというと、入り口としては保健所が
    いいかなと思います。
    保健所の精神衛生に関するスキルは高いので、相談相手が見つからない場合は
    地元の保健所に電話して、事情を話してみるのもひとつの方法だと思います。
    (相談内容が第3者に漏れることも無いでしょうし)
    意外と精神衛生に関する保健所の機能は知られていない感じがします。
    プロ意識の高い精神関係専門の保健士さんもいるので、一般世間よりも話は
    通じやすいかなと、思います。

    • yurin
    • 2006年 12月 03日

    こんにちは。
    >根本的に異なる認知の特徴に根ざし、
    >また独特の詩的・象徴的表現を伴う「独特の文化」である
    息子(5歳)にも、これにあてはまるのではないかと思われる言葉表現が時々みられます。昨日も突然何の脈絡もなく『入ってなかったんだよ』・・というので、『何が入っていなかったの?』と聞いてみたところ、困ったような顔をして辛そうに見えたので、聞き方を変えてみることにしました。
    つまり『入ってなかった』という文章に『ない情報』を引き出そうと考えたのです。
    ・いつの話か(昨日の話?今日の話?)
    ・『入ってなかったもの』があった場所(幼稚園?家?など)
    ・入ってなかった『もの』はなにか?(おもちゃ?食べ物?)
    ・『入ってなかった』という『入れ物』はなにか?(箱かなにか?)
    ・・・というようなことが引き出せるように、いくつか質問して、
    かなり時間がかかりましたが、息子が言う『入ってなかったんだよ』というのは
    『(幼稚園の)自分のクラスの部屋に置いてあったダンボールの中に、前日にはたくさんはいっていたものが翌日にはなかった』
    ・・・ということのようでした。ちなみに『入っていたもの』について息子の話では『おもちゃのバナナが一万個』と表現してましたが、これはおそらく『おもちゃがたくさんあった』ということと判断してます。
    息子の話を聞きながら、どうやら彼は言葉で相手に伝えようとするとき、どうしても『(印象に残った)細部にこだわる』ところがある。そのためなのか『自分ではその状況の全体像をつかめないので、上手く話せない』ように見えました。
    この方法が合ってるかどうかわかりませんが、話をしながらようやく内容が見えて息子と話が合ってきたとき、彼はとても嬉しそうな表情をしていました。コツとタイミングをつかむのが難しいので時間がかかりますが、分かり合えたことは双方にとって喜ばしいことです。

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