AC、人格障害関連

「ジャイアンに戻る」

 ジャイアンACは非常に多彩な病形を取りうる。状況察知能力と幼少期の環境により、ボーダー様から摂食障害、解離を伴うこともある。

 私の治療方針は単純で、「ACの部分をまず治す」という方法で進めている。特に自己免疫疾患や難治性のうつ状態が悪化しているようなケースは、とにかくACの部分を治して二次的な病気を治してしまうことが優先となる。
 
 ただ実際の治療の過程では、ADHDの診断を納得するところまでは何とか進むが、そこから治療がパタリと止まってしまうことが多い。
 よくよく話を聞いてみると、「ジャイアンに戻る」ことが実感として理解出来たからだったようだ。

 私もそうだが、ACの前に中心志向が強かった人などは、他者がほめられることへの強烈な妬みやひがみの感情、抑えがたい攻撃性などが徐々に表面化する。それだけの理由で「ACのときのほうが良かった」という人も居るほどだ。 
 
 私は実際に酒を飲めないのだが、実は飲むのが恐ろしいとも思っていた。自分の中の攻撃性が尋常でないことは何となく分かっていたので、「飲酒して合理的に抑えが効かなくなったらどうなるんだろう」と恐れていた。今も例え飲めたとしてもそういう危険なことはしないほうが良いと考えている。

 ACからの回復の途中で自分の本質がジャイアンであることに気付いて不安になり、あるいはあまりの自己中で醜い自分を正視しつづけること堪え切れず、回復がストップすると、一時的には「離人症」に近いような状態となる。
 
 本当のことが分かってしまったからにはADHDとして今更ACには戻れない。さりとてこのままジャイアンに戻ってどうなるんだろうと迷い苦しむ状態だ。

 私が「カミングアウトしたジャイアン」としてケアに当たっている意味はこの場面にあると私は考えている。

 これから本人が戻り行く醜く自己中なジャイアンの姿を「了解」することは普通は困難であるからだ。
 
 私はジャイアンACのカウンセリングで、回復の途上で本人のジャイアン的な部分が見えてくると、「良かった」「良くなっている」と大いに喜ぶが、本人は複雑な顔をすることになる。

 実際そうでもしなければ、ジャイアン的な醜い部分が自分にもあることは隠し続けるしかなくなるだろう。
 隠し続けることはACが治らないことを意味し、本当の意味での回復は望めない。

 「それで良い」。もともとの脳がそう出来ているのだから、そこから別のほうに行こうとすると必ず別の病気になってしまうから。
 その姿が本当の姿なんだから、そこに戻ってそれなりの生き方を一緒に考えて行こう。
 
 私は自分のことを引き合いに出し、私の場合は「贖罪」のようなものだと説明したりする。自分が醜いことから目をそらさず、自分を責め続けて生きるのは正直きついではあるが、「自分なりに出来ることのベストを尽くすから勘弁してくれ」と自己突っ込みに対して言い訳をし続けて生きている。
 
 一方で自分を責め続けていても、ADHDの過集中とジャイアン的な根性は全開で使える。それらを少しでも生かせる環境に行けさえすれば、とりあえず「直ちに自分を殺してしまう」ところに行かないで行き続けることは可能だ。


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コメント

    • Coo
    • 2011年 5月 28日

    先生にADHDのACと何年か前に指摘されてから、その後の自分の状態が凝縮されているような今回でした。
     医療職の学校生活の終わりに舌の異常で受診したら舌乳頭委縮ドライマウスがありその後シェーグレンの不全ではとの診断がありました。それでも医療職となり、2年以上・・ついに最近仕事を辞めることになりました。理由は
    ・人の話の途中でわりこみ話す
    ・話し言葉の中に錯語があまりに多い
    ・文章に言葉の間違いが多くコメントがあまりに稚拙
    ・他の人から聞いた話は初めの部分以外は忘れてしまい正確 に上司に伝えられず下手をしたら虚言に近くなる
    ・人がいるところでもこれが言いたいとなったら場をわきま えられず攻撃的になる
    ・性格の問題も自己顕示欲が強く劣等感も非常に強いとのこと。そして最大の問題は回避いつも逃げている
    (これは全部自分の上司からの指摘です。)
    最近身体上の問題がほとんどみられなくなってきたと思ったら、とても攻撃性が強くなり自分がもともとはジャイアンだったことを痛感しています。しかしACが少しよくなったらジャイアン丸出しで、しかも回避もみられて仕事を続けられなくなる。。自分はこれからどうしたらいいのだろう。苦しいです。

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