AC、人格障害関連

ネット上相談システムの構想

 私の今回の異動について、これまで相談に乗っていた当事者本人たちやご家族からいろいろ問い合わせがあり、私もずっと考え続けている。

 その中ではっきりしてきたことは、「発達障害ケアは時間と手間がかかり、根本的に経済原則に合わない」ということで、それならば経済原則から外してしまおうと考え、ネット上のボランティア相談システムを考えることにした。

 何名かの当事者には実際に提案してみたが、ADHD群からは賛同もあり、どうやら使えそうなコメントも聞いた。

基本コンセプトは以下の通り。

1.全相談者本人が一人ひとりパスワードつきのクローズドの本人専用の掲示板かブログを準備して主治医や臨床心理士にパスワードを伝える。

2.本人は相談内容を本人専用クローズド掲示板に書き込み、回答者(主治医や臨床心理士)は定期的に空いた時間に読んでコメントする。

3.主治医の医療機関に外来カルテがある人は外来診療の補完の「資料」や「メモ」としてカルテに内容をプリントして保存するが「受診」とは算定しない。

4.主治医の医療機関に外来カルテが無い人については、完全に「自己責任の相談」と見なし、医療とは無関係な個人的な相談と考える。

5.回答するかしないかについては、全面的に回答者が判断し、すぐに回答を要求することは厳禁とする。(回答がすぐに得られないことに不満を持つ人は相談者の対象としない)。

6.おおむね二週間に一回程度は回答の書き込みが出来る範囲の人数に適宜制限する。

7.回答者は随時、相談者本人との相談で関係機関(PSW、相談支援担当者、保健師、学校関係者等)などや家族まで広げることも可能。

 成人ADHD群で学習障害の目立たないケースの場合は、主に言語的に問題点を整理して、状況理解に対する助言や現実的なアドバイスが中心となるので、実際に「診察」の形は必ずしも必要でない。

 学習障害や依存型の重症例など言語的・合理的思考が不得手のケースは、直接対面して主治医から対話的に突っ込んだり質問したりすることが必要で、この形は難しいだろうと想像している。

 AS群はKY重症なタイプ以外は基本的に対面して非言語的な安心感を求めるので、この形にはなじまないだろう。短時間の対面の診察と並行して情報を整理する形で導入することになるだろう。

 児童思春期は言語的な伝達が困難なケースも多いので、基本は対面診察であるが、親からの情報や関係機関からの情報がクローズドの掲示板にまとまっていると便利ではある。

 今振り返れば、「勤務先からいつ辞めさせられるか分からない」という意味で立場が不安定であることと引き換えに、普通の仕事をほとんどしないで臨床心理士とともに外来カウンセリングの探求にここ6年間は専念してきた。

 その結果一定のスタイルは確立できたが、結局経済原則と両立しなかった。もう一つ、根本的な問題として、「新患を制限せざるを得ない」という本質的な問題にもぶつかっていた。

 このシステムは経済的な制限のほかに、この物理的、時間的な制限も突破できるという可能性を秘めている。

 賛同していただける医師の先生方や臨床心理士、PSWなどを少しずつ増やして行って、合計10名でも居れば、相当な数の相談者をケアする可能性があり、またうまく使えば回答者の教育研修システムにもなる。

 ネットだから世界のどこに居ても、共同のケアが可能で、地理的物理的な距離を考慮する必要が無くなる。

 Linux ばりに、l「経済原則どうだ参ったか」である。とりあえず順に説明して行って試してみようと思う。


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コメント

    • asa
    • 2010年 3月 24日

    とても良いと思います。
    楽しみにしています。

    • 匿名
    • 2010年 3月 25日

    このブログのように、ネットで相談を受け助言をくださったら救われる方はきっと多いだろうなあ、でもYANBARU先生のご負担になってはいけないし、と小生も考えていました。
    素晴らしい試みだと思います。

    • 林檎姫
    • 2010年 3月 25日

    すごくいいと思います!
    いろいろ、模索しながら進んでく先生を応援してます。

    • mican
    • 2010年 3月 25日

    ぜひとも参加させていただきたいです。
    システムテストなどを募集されることがあれば
    ぜひそこから参加させていただけたら、ありがたいです。

    • 人間失格
    • 2010年 3月 25日

    なんだか同じ事のくりかえしになるような気がします。
    今回も「経済原則に合わない」という事で、急に状況が変わってしまたんですから・・・
    前もって、クリニックのひとから「デイケアの人を、増やしてください」という要望や、ご自分の給料の半分も稼いでいないとお気づきなら、今回みたいな状況になるのは、見えていたはずなのに、急に、今までの様な診察や、卒業をお願いなど、なんだか無責任のような気がします。
    そして、また安易に「ネット上相談システムの構想」だなんて、また無理でしたなんて言い出しそうで・・・

    • middlekick
    • 2010年 3月 25日

    いつもBlogを拝見してます。
    YANBARU先生の構想に感謝するとともに
    是非実現して頂きたいと思います。
    長い間、目に見えない得体の知れないモノに
    脅かされ、この恐怖に打ち勝つ努力を続けるために。

    • 海運
    • 2010年 3月 27日

    いつもBlogを拝見してます。
    境界性、発達障害を疑ってたら、
    自分は最近、妄想性パーソナリティ障害と診断されました。
    その関連のことをのせてくれたら助かります。
    お願いします。

    • ふうふうぷう
    • 2010年 3月 28日

    二度目のコメントです。
    自分自身のADHDと家族のADHD、アスペルガーに日々悩み続けているにとっては先生のブログは救いです。
    受診するということは精神的に自分を追い込むことになり辛いですし先生の記事の中の御自信の分析や患者さんの症例を読ませていただくだけで整理できる気がします。
    経済的なことで受診できない人は本当にたくさんいて、この脳の特徴により引き起こされる悩みやトラブルは一生続き、経済的負担はとめどなく続き、体の病気に関することなら寄付やカンパを募れてもこの苦しみをまともに説明することも出来ずどんどん自分を追い詰めていく気がします。
    先生のブログにたどり着いた私は運が良いと思っていますがもしここに来ていなかったら今も少数派の自分の異常さを隠すようにまわりにあわせて、自分を責めて日々送っていたと思います。
    最近、無料サービスから始まって拡大していく企業の特集をTVや雑誌で見ましたが当然どこかの部分でお金が発生しているわけで当たり前なのですが、このような医療に関してはどうなのでしょう。
    経済的負担を軽くして心の負担も軽く出来て専門の先生方に医療報酬を得ていただくシステムがあればいいのですが、そうなるときっと会費は必要ですね。繰り返しお世話になりたい人は先生の時間や労力に対して当然きっちりした形のお礼をしたいと思いますし。
    ただ、先生の確かな知識と技量とすばらしい人間性に裏付けられた分析やアドバイスだけでなくたくさんのともに悩みを抱える人たちの言葉がほんとうに救いになります。
    本当に・・・もっと出来る自分と比べていつも劣等感と自己嫌悪の毎日。出来る自分というのは周りのすばらしくかがやいている友達を見ている気もして現実がみられていないのか、でももっとぐだんぐだんの毎日を平気で送る人にはこれまた嫌悪感があり、やっぱり理想の自分に身を置きたいと考えます。
    理想のシステムを作っていただきたいです。

    • エイト
    • 2010年 3月 31日

    先生のブログを無料で利用できることに、そして救われていることに本当に感謝いたします。
    でも個別相談となると、先生はボランティアで良いとお考えでも、無料ではとても心苦しくて相談を躊躇する人もいると思います。
    経済的に困難な人は別としても、経済的余力のある人からの相談はできれば有料にしていただきたいです。
    先生、今「病気になる寸前すれすれの低い自己評価」に助けられています。
    (年明けから、先延ばしにできないことが次から次に重なって、追い立てられるように過ぎたものの、しわ寄せになった分の先延ばしのせいか鬱気味で無気力です)

    • とよチャンネル
    • 2010年 5月 03日

    ご無沙汰しています。
    沖縄市のK心療内科でお世話になっていた者です。
    先生のご提案にすごく賛成です。
    ぜひとも多くの人に役立つインターネットのHPシステムが出来るといいなぁ~。

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