AC、人格障害関連

戦力外通告

 私は相談に来られている発達障害の当事者のほとんどに、「妥協するか、狭い世間を覚悟するかどちらかを選ぶしかない」と告げている。

 3月10日、その私にここ3年間で3度目の戦力外通告が来た。勤務する精神デイケアの個人クリニックから、「3月いっぱいで辞めてほしい」という内容だった。
 
 実は覚悟していた。昨年冬にデイケアの利用者数を増やすように依頼されていたが、正月過ぎの風邪等で逆に利用者は減少し、クリニックの経営が苦しくなった。

 私は実は自分の給料の半分しか稼いで居ない。外来は一人ひとりの時間を60分以上と十分に取っているから、一日の外来収入は逆に赤字になっている。

 だからある意味私の外来は「道楽」のようなもので、「ここまで良く置いて頂けました」というのが経済的な本筋の意見であることは重々承知していたつもりだ。

 そういうわけで、クリニックには「デイケア利用者数を増やせず申し訳ありません」と頭を下げ、すぐに就活に入った。

 たまたま以前よりお世話になっていた先生から誘いがあり、本日新しい勤務先の契約を済ませてきた。沖縄県名護市と国頭郡本部町にある「ノーブルメディカルセンター」、「ノーブルクリニックやんばる」に4月から勤務することになった。

 ところで今回のことは、結局冒頭の発達障害の大問題が私自身に突きつけられたということだ。医師の希少性やライセンスの力を持ってしても、「経営に反するようなスタイルは世間で居場所を得られない」という現実であると私は思う。

 というわけで今後は「普通に」精神科病院の業務をすることとなり、これまでの外来の当事者の全部は当然診られないことになる。今後の相談であるが、今のところは勤務時間終了後や休みに「特別カウンセリング枠」を設け、細々と相談を出来る範囲で続けるしかないという見通しだ。

 結果として、これまで再来が7週おき程度であったのが、絞っても3ヶ月程度空くことになる感じであるが、地理的にもかなり遠くに移ることもあり、私の外来を卒業していただく人には卒業を勧める必要もあるだろう。 

 まあ久しぶりに「普通に病棟などの精神科医としての仕事をする」ことになる。
 「仕事はした上でゆとりがある部分だけ好きなことをする」というのが考えてみれば本来の姿で、ここ6年間が考えてみればずいぶん横着なことをしてご迷惑をおかけしてきたということになるだろう。

 私の診療スタイルを根本的に再考する転機に差し掛かっているということだ。今日契約を結べて、正直ほっとした。今回は本当に「世間に居場所が全く無い」ことを感じたではあるので。


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コメント

    • 匿名
    • 2010年 3月 16日

    小生も最近、職場でも家庭でもない憩いの場所で居場所がないことを認識させられることがあり、そこへは行けなくなってしまいました。自分自身としてはかなり居心地がよかったのですが、その分多数派の人たちには迷惑をかけてしまったようです。
    新天地でのご健勝をお祈りしております。

    • kame
    • 2010年 3月 16日

    やんばる先生とは能力も立場も違いますが、同じような状況にあります。それはなぜだか「いつも」そして「今も」なのです。
    自らが原因であることを、覚悟して生きているつもりですが…
    「世間に居場所が全く無い」をしみじみ感じています。
    もっと低レベルですが。

    • asa
    • 2010年 3月 16日

    戦力外だなんて・・・。
    本当は東京に出てきてADHDやアスペの認識をもっともーっと広めてほしいですが・・・。
    でも、実現したら、先生を求めている人が多すぎてパンクしてしまうでしょう。
    新しい場所でも頑張ってくださいね。

    • 匿名
    • 2010年 3月 16日

    皆さんのお邪魔にならないよう、ROMしていました。
    どこでも収益、収益と言われてしまいますね。
    熱心に患者さんを見れば見るほど赤字になるなんて
    根本的に間違っています。
    元気出してくださいね。

    • あまがえる
    • 2010年 3月 16日

    新たな勤務先と契約できて良かったですね。
    ADHDとASを専門とする極めて稀な医師なので、公的なバックアップがあっても良さそうなもの。
    結局のところ、外来患者への充分な対応は経営を考慮するとできないのが現状というわけなのですね。
    これで良いのかな、医療は。。

    • なみへい
    • 2010年 3月 16日

    やんばるで根づきますように!

    • 匿名
    • 2010年 3月 16日

    先生、お久しぶりです。精神科に居場所をなくし、地域医療で頑張っていますが、やっぱりプロパガンダを失った隙間風は堪えるところがあります。先生の発信プロパガンダが勝手ながら私の動力源でありますので、メッセージの発信だけは続けていただけますよう 祈っているしかないですが。

    • okinawanlei
    • 2010年 3月 17日

    ギャーそんなー!と言いたくなるところですが、あの丁寧なカウンセリングに、やんばる医師の心配をしていたところですが、やんばる医師らしくて面白い!そんなこと言ってられない程、追い込まれ感があったとはおもいますが、どうもおつかれさまです。しばらくそこで頑張って,敏腕経理やら、管理者をつけていつか開業してもらえる事願います。あれ?これはやんばる医師からの指示でしたね.私も頑張ります。それでは本部まで追っかけていきますので、やんばる医師が精神科医になってくれた事に異常に感謝な今日この頃。

    • やまねこ
    • 2010年 3月 17日

    初めまして。
    いつも先生のブログに教えられてしかられて励まされて慰められております。
    新たな道が開けますようにお祈りしています。

    • 林檎姫
    • 2010年 3月 17日

    >妥協するか、狭い世間を覚悟するかどちらかを選ぶしかない。
    ほんとにその通りです。
    妥協しきれないし、狭さに苦しむ。
    どっちつかずが一番つらい。
    先生は勤務医だったのですね。
    雇われていると、妥協することも必要なんですよね。
    いつか、少数派による、少数派のためのクリニックができたらいいなと勝手に期待してます。
    新しい場所でも、頑張ってください。
    先生の言葉に救われている人間はたくさんいます。

    • YK
    • 2010年 3月 17日

    大変でも粛々と日常をこなしていくこと。
    脳内ストーリーにうつつを抜かす間があるなら現実対処すること。
    お手本にしてがんばります。
    どうもありがとうございます。

    • きんぢょう
    • 2010年 3月 17日

    ほんとに、ほんとに現実は厳しいですね。
    やんばる先生の近況、自分との境遇は違えど厳しさを痛感しました。
    そしてまた、挫折しそうにもなります。
    そうではありませんよね。
    頑張ります!
    少しでも発達障害に理解と知識のある優しい世の中になってほしい。
    やんばる先生のブログやカウンセリングを通じ叱咤激励されてきました。
    ありがとうございました。
    先生の穏やかな暮らしを思いながらも
    これからも学ばせて頂きたいです。
    現実に飲み込まれず自分として現実に交ざっていけるよう試行錯誤しながらも生きていけます。
    ひとまず、お疲れ様でした!

    • うずまき
    • 2010年 3月 17日

    タフなやんばる先生のこと、きっとどんな場所であってもそこにいる意味を見出されることと思っております。これからもブログ更新楽しみにしております。

    • ひまわり
    • 2010年 3月 17日

    私は、今の職場に5年勤めていますが、
    来年度、定年に近い年齢にも関わらず、正職員として採用されました。
    途中、家庭に入らざる得なかった時期も長かったですが、
    初めて、同じ箇所で5年も勤め、今後も勤められそうです。
    その居心地の良い職場は、障害児者通園&デイサービス等の総合福祉施設です。
    その職場には、特徴は違うにせよ、私と同じにおいのする少数派の人が職員として沢山働いている、
    そして、少数派の親子相手の仕事場は、
    少数派の旦那と別居している我が家の他に、
    唯一自分らしくいても許される空間です。
    YANBARU先生のお陰で、自分を知り、家族を知り、世間で生きていく方法が学習でき、
    時々かなりしんどくなりながらも、本来のお気楽人間として堂々(?!)と生きていけています。
    先生を励ますなんておこがましいですが、
    新しい勤務先で、先生が少しでも居心地の良い思いで働けることを祈っています。

    • 小禄東薬局
    • 2010年 3月 18日

    少しの、間でも御一緒にお仕事させて頂けたこと
    キャリアーにしても、どれ程学ぶ事
    が多く有ったか、はかり知れません。
    日本中から、集まる患者さん達、先生は今までも、これからも
    日本中の患者様から、刮目されています。
    くれぐれも、お体にお気お付けて、お仕事して下さい。
    チャンスが有りましたら、またお仕事させて頂けたら幸いです。
    初めの、眠剤の処方の事など、技術的にも忘れられない事ばかり
    です。

    • ハイジ
    • 2010年 3月 19日

    はじめまして
    女サムライのAs長女を5年前から支えている母ハイジです
    やまねこ市で小学校生活に疑問を持った女サムライの長女は不登校という道を選択しました
    私も 教職員であったことで 
    特徴のある子どもとして気をつけて育てていたつもりでしたので きたか という覚悟はできていましたが 
    長期戦と学校側の無知に対して
    最近は疲れ気味です
    今日 検索の途中で
    YANBARU先生の戦力外通告にヒットし 
    ノーブルクリニックのことや北部地区での取り組みについて以前の研修や新聞記事等をおもいだし
    すっかり画面の虜 キーボードをたたきました
    久しぶりに 自分の気持が解放される感覚を実感してます
    職場が代わられて 
    忙しさもあると想いますが 
    どうぞご自愛下さいまして 
    私がコメントに夢中になれる場所の継続をお願います
    こう書くと
    まさに女サムライ長女のコメントっぽくなります
    人間として
    女サムライ長女の観察は興味深いものがあります
    発想の豊かさ 社会にとらわれない感覚
    しかし このままでいいのかという反問
    これが きついんですよね 親としては
    もちろん生きてるだけでいいと思った日々もありましたが
    ・・・・長くなりそうなので また書きます 
     
     

    • ぴよよ
    • 2010年 4月 05日

    今回は、ヤンバル先生の合理的判断のお陰で、次の就職先が決まってから私達にこうして知らされ、私達はほっと胸をなでおろせば良い立場でした。しかしこれが何ヶ月たっても解決しなかったらどうなるでしょう? これが、私達、薄幸で凡才な能力しかない発達障碍に隣り合わせている危険なのです。
    インターネットという情報源から得られる材料には限りがあります。そこから想像できることもどこまでいっても想像であり、合っているか間違っているかは分からないことが前提ですが、たぶん読者としても、コメンターとしても私達は行き場を無くし、これまで幾度となく強いられてきた喪失感を抱えなければならないかもしれない。
    そしてヤンバル先生が直接診察していた患者のかたたちも路頭に迷い、特に適応途上だった人は依存・嗜癖の誘惑に身を焼かれ、何より一番はヤンバル先生ご自身も生活の糧を失うのです。
    ヤンバル先生は、記事の方法で適応途上の人の支援や指導を続けようとされていますが、だからめでたしとは決して感じません。私達の直接の支援はこうした医師の無理な自主性でしか守れないのが現実です。まだ、国もどこも私達に薬を使わないでビリビリする認識をコントロールする訓練を保証する気は無いのです。させようとする気も無い、つまり生かそうという気も無いのです。
    その危機感は私達も感じる意味はあるのではないでしょうか。誰かに『危機感を感じなさい。』と親切に命じてもらえることはありません。たぶん当事者の大半は無いでしょうが、危機感無く、私達当事者全員が受け身で待っていられる程ヤンバル先生に時間や体力の余裕は無いのではないでしょうか。
    たまたまヤンバル先生は体力を持ち合わせていて動けました。しかしもし何らかの発病があって虚弱になられたら? それで新しい病院から職務以外の活動を止められたら? 私はずっと過去にそうして医師に切り捨てられたことがあります。ヤンバル先生さえやってくれればめでたしとは思えません。ヤンバル先生に意志があってもそれを阻害する者も要素もこの世には幾つも存在するのです。
    続きます。

    • ぴよよ
    • 2010年 4月 05日

    続けます。
    ヤンバル先生の試みは無限の可能性があります。しかし実現するかは話が別の状態です。現実にそういう状態です。だから、私も、書かずにいられなくなって書いている。書きたいことは切れ切れに溜まっていたけど現実の生活で疲れきっていて、まだ抜けなくて、疲労で悪夢も見る調子で、それでも書いている。
    誰かが無理をして傷つかないと私達は生きられないのでしょうか? 人生を取り戻そうとしてはいけないのでしょうか?
    危機感でもちろん世の中は変わりませんよ。一日24時間が増える訳でも無いし奇跡的なアイデアが出る訳でもありません。それでも危機感を持つ意味は無いとは思えない。
    こうしてASが自分のこと以外に関心を持つこと自体が、健全な患者の在り方ではないかもれません。しかし健全な精神状態の発達障碍を受け入れきれる社会であるとも思えません。嫌な言い方ですが、望まぬまま叩かれに(叩きに?)社会へ出ているのに、いつまでも図々しく健全な精神でいられる訳がないように思います。社会へ出ても逃げても、私達に今、健全で生きられる場所が無いのです。
    私達はどこまで社会に虐げられた存在なのだろうと、憤り新たにしています。
    ヤンバル先生はそれでも『自立して社会へ出なさい。』と伝える方法を探しています。他人はなかなか言えません。家族ですらも言い方が分からなくなるものでしょう。それでも健全でいられない痛さを解った上で、言い続けてくれる存在はヤンバル先生しかいない、だから貴重な存在なのではないかと思っています。

    • rika
    • 2010年 7月 07日

    何年か前にADHDのACでやんばる先生に相談し、母と姉との距離をとうるようにしていました。
    それで状態は保たれていました。
    自分のことをするのに、仕事に打ち込んでいた。働きながら、看護師の資格もとることができました。   
    この時は、働きながら出来る部署に配属されました。(
    年齢が近い人に指摘されて、甘えていると言われました。)
    その後は急性期病棟で今まで接したことないスタッフとの関
    係が結べず、人間関係が徐々に悪化していきました。
    4年前から、頭痛、動悸、体の重さがあり、人が悪口を言っ
    て入るときが嫌でその場を離れると、他人とは逸脱行為のよ
    うにいわれたり、とにかく情報が多くて仕事に集中出来ない
    ことが多くなりました。
    周囲からの雑音に振り回される、言語化しても行動が伴ない

    • syun21
    • 2011年 4月 20日

    定期的に先生のブログをチェックしているADHD当事者の大学生です。
    私は、臨床心理士になり、ADHDの研究者になることに決めました。
    もし先生と一緒に研究できたら、と想像すると、わくわくします。
    お医者さんはとても激務だと想像していますが、新天地での慣れない環境で体調を崩さぬようお気をつけてくださいね。

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