AS(アスペルガー)関連

コーチング②ASの時間認知

自己コーチングガイド各論② AS(積極奇異型および孤立型)の自己理解そのE (時間認知)

E.ASの変化を嫌う時間認知の特徴を理解する。

 多数派は、時間の流れを未来と過去へ数分、数時間、数日、数週、数ヶ月、数年と、いろいろな尺度を自由に使い分けながら想起することが出来る。またこれらをカレンダー状に頭の中に配置して、あたかも長期間の詳細な予定表が取り出せるような形で記憶する(量的には限られているが)ことが出来る。それに基づき、期限の時間に間に合うように、「前々から準備して計算して間に合わせる」こともさしたるストレス無く実行できる。

 これに対しASは、「数年、数十年過去と未来まで一目で見渡す」ような時間認知を持つ。記憶力が非常に良いのもASの特徴で、数年前の出来事も克明に思い出せる。逆に、「とりあえず」ということは不可能で、「最後にこうなる」という結末まで考えないと、一時的な選択も出来ない。

 その結果、「選択の場面で非常に迷う代わりに、選択が終わってからは一切後悔しない」「後悔するなら初めからするな」「一度決めたら最後までするしかない」という融通性に乏しい行動パターンを帰結する。

 この時間認知の弱点は、「変転する状況での臨機応変の対応が出来ない」ということであり、状況の変化について行けないことで非常にストレスを感じ、状況の変化によって結果的に自分の選択が裏目に出たときの自分に納得が出来ない辛さはASで無い人の想像以上のものがある。

 あなたの生活で上記の説明に当てはまることがありますか? 具体的に書き出してみましょう。

 この困難さを克服する方法は、「変化の少ない環境を選ぶ」ということに尽きる。ひとつの道、ひとつの領域、ひとつの技術などを何十年もかけて深めていくような世界がASには向いている。

 ただ積極奇異型の人などで、どうしても参加したい環境が変転する分野であった場合には、「変化を可能な限りあらゆる場面に渡り想定しておく」という方法しかない。

 もうひとつ、多数派との多くのトラブルの原因となっている行動の特徴に、「最近の状況の変化を考慮に入れないで過去の事実関係をそのまま引き合いに出して証拠にしたりする」ということがある。多数派はほとんどの場合数年前のことなど忘れており、また「数年前とは状況が違うのでその時のことと今のこととは別だ」と考えるため、ASの人の立論が通用しないことになる。

 上に書き入れたあなたの困難さに対して、上記の工夫を具体的に考えてみて書き入れてみましょう。

 


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コメント

    • ALIVE
    • 2006年 11月 15日

    こんにちは。
    時間という目に見えないものを取り扱うのは苦手です。
    時間は均一のものではなく、伸縮します。規則性は読み取れません。
    >ASの変化を嫌う時間認知の特徴を理解する。
    これは変化を外から見た表現です。AS当事者には下記の表現のほうが
    伝わりやすいと思います。
    ASの変化への耐性が低いという時間認知の特徴を理解する。
    >とりあえず」ということは不可能で、「最後にこうなる」という結末まで考えないと
    >一時的な選択も出来ない。
    私は試行錯誤する事はできますが、確かに「とりあえず」試行錯誤する事はできません。
    一度試行錯誤を始めたら、結果がどうあれ納得するまで、その行為は継続します。
    ただし、身近にいる人が、具体的な説明で指摘してくれれば、中断することもできます。
    これはその時点で、何が最優先事項であるかを知ることです。
    >自分の選択が裏目に出たときの自分に納得が出来ない辛さは
    >ASで無い人の想像以上のものがある。
    最近は自身を内部で分割させて、苦痛に対しての分散処理をさせるという方法を試しています。
    例えば、この処理は担当者F、こちらの処理は担当者A、この場合は担当者Hという感じで。
    でもこれは、一時しのぎにしかならないというのが実感。
    それとやはり、窮地に追い込まれたときは、相談できる人に話をするというのが
    効果的だと感じています。
    その場合も、事前に何をどうしたいのかを自分自身で
    はっきりさせておくといったような事前準備をしてから話をすると、相手にも伝わり
    やすいかなと、思います。(私の場合は相談時、ノートを持参していくのですが
    ノートのすみに「感情的にならないように」とか「落ち着け」とか「主題から離れないように」
    とか、いろいろ書いておき、つねにそれをみて、話をしてます。)

    • 匿名
    • 2006年 11月 19日

    コメントありがとうございます。
    ALIVE様
     ASでも多数派でも、自分自身には当たり前に見えていることを客観的に理解することはなかなか難しく、かなりの努力が必要です。だからこそ、コーチングの作業は「自己コーチング」であっても、ケースワーカーなどに助言を求めながら行う形になります。
     コーチングのやり方まで頼らなくて良いという意味での「自己コーチング」と理解してください。
     今後ともご意見を教えて下さい。
    コメントありがとうございました。

    • tukatantikatan
    • 2015年 1月 14日

    私も時間というものは自分の外にあると思ってました。いつも追いかけるものであった。ところがそうじゃなかったです。皆時間の感覚は持ってるんだけど、人により速さが違うし、人の中で伸縮するし、円環するし、ワープするんです。集団であるためには統一する基準が必用になって時計を作ったのだと思った。時計にあわせると時間は自分外のものになってしまう。でも集団で暮らすのが目的なら時計にあわせるのはしかたが無いと思う。私の時間感覚は進んでるのか進んでないのか一見わからないような大きな流れで、でもよく見ると進んではいるんですが。時間というものについて考えようとすると、自分外の何かについて考えると思ってしまうが、ほんとは主観について考えるということだと思う。時間の感覚は主観に他ならない。主観の長さを区切るために時間(時計)というものを作ったのかな。云々云々

    >状況の変化によって結果的に自分の選択が裏目に出たときの自分に納得が出来ない辛さはASで無い人の想像以上のものがある。
    ASDの人で謝るときに「神様」に謝ってる人がいて、でも信仰があるわけでなくて、なんでかなと思ってたけど、人間の相手に謝るとこういうことが起きると、つまり自分で自分に謝るてことは、ありえない、世界が崩壊しちゃうように思うのかなと、思った。私はそれは嫌じゃないです。ASDの人の誠実さのように思う。

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