AC、人格障害関連

行き違い共依存

 ジャイアン型ADHDの場合、子供などの「経過を知っておきたい」ことから来る「管理型共依存」が見られることは以前に述べた。実はこの他にちょくちょく見られるADHDの関与する共依存があり、なかなかパッとした表現が見つからないが、「行き違い共依存」として説明してみよう。

 合理的なADHD、またはジャイアンでも合理的に行動する場合に、「状況に対して合理的に行動していたことが結局共依存の車の後押しだった」という現象が実に頻繁に見られる。

 非常に不条理な家族や関係者が居る場合、「その他の家族のために安全を守る」などの「合理的必要」があって、または「全体の利益のためには自分がするしかない」という合理的な判断によって、言わば「行き違い」で結果的に共依存状態が出来上がってしまうということだ。

 通常「共依存」は依存させる側、世話をする側も「相手にとっての必要」という立場に依存することで、自分自身の不安が消失するなどの心理的なメリットを得る形になっている。
 ジャイアン的な「管理型共依存」には「自分の予想しなかった結果になることが無い安心」が得られるので共依存的な形ではある。

 ところがこの行き違い共依存は自覚症状上は依存はまったく存在しないのだが、結果の形は明らかにイネイブラーになっているところが皮肉といえば皮肉だ。

 「DVのパートナーが子供たちに怪我をさせないために子供たちを守ろうとしてずっとフォローしてきた」行動は合理的には非難の余地は無く、これを共依存だったと指摘するのは非常に辛いのであるが、結果はこのパートナーを尻拭いする結果になり、パートナーおよび子供たちが依存型ジャイアンになって行くプロセスの後押しになっていた。

 「相手がジャイアンの依存性を持っている場合には」という条件をつけて考える問題かも知れないが、実際こういう行き違い共依存の現象はしばしば見られる。

 先の例で言えば、「DVのパートナーが不条理な暴力でしつけるという方針を改めない段階で子供を連れて別れる」という選択を、(子供がジャイアンである場合には)、する必要があったということだ。


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コメント

    • あまがえる
    • 2010年 2月 04日

    > 先の例で言えば、「DVのパートナーが不条理な暴力でしつけるという方針を改めない段階で子供を連れて別れる」という選択を、(子供がジャイアンである場合には)、する必要があったということだ。
    これは子供がジャイアンでなくてもそうする必要があると思いました。

    • 林檎姫
    • 2010年 2月 04日

    確かにそうだと思う反面、この考え方が正しいとするなら、ほとんどすべての人間が、なんらかの障害を持っていて、ほとんどすべての家族が共依存にあるようにも思えてきてしまいます。
    これも「否認」という先延ばしなのでしょうか・・・
    そして、なんでも合理的に考えられるやんばる先生がうらやましいです。
    わたしには、合理的な考えをすることは大変難しく、感情で動いていつも失敗するからです。
    なんとなく、自分の問題が見えてきました。
    更新楽しみにしています☆

    • うずまき
    • 2010年 2月 04日

    今回の記事は胸が痛みました。
    私の父は普通人でしたが、ジャイアン母の子供に対するDVを結果的に継続させることとなりました。家庭内に不条理な人間がいると、普通の人でさえ冷静に判断することは難しいかと思います。ましてや一昔のこと、普通の人間にそうそう離婚などできません。父がとった行動は、いかにして母を激昂させないかでした。子供にとっては地獄以外のなにものではなかったですが、今では父のことは許しています。大人になって、自分自身が人間のもつ根源的な弱さを知り、理解を示せるようになったからです。常に冷静に判断できる人間などいないのですから、、、
    ただ、いまだにイネイブラーの役割を果たしている父とは個別の関係においては健全な親子関係を保てていますが、一度母が絡むと奇妙な状況になります。父は、「それでもお母さんはお前のことを愛しているんだ、あんなに子供を愛する人は見たことが無い」と、ダブルバインドをかけてくるのです。もちろん母の激烈な愛というのは、先生が再三説明されている通り、自らの不安を取り除くための自己中心的な仕切りに過ぎないのですが。(それは、母が結局私の人生を思い通りにしようと圧力をかけてくることに如実に現れています)
    そんな時は、生物の基本に立ち返りながら、過去のこととは別に合理的に話を進め冷たく切り離します。この際に先生のブログはいつも役にたっています。母に悩まされる父は気の毒とは思いつつ、自業自得だと思っています。家族は私のことを情のない人間だと思っていますが、本当にそれ以外建設的な道がないのです。ほんの少しでも合理的にものを考えられない(というか、考えられるのだがわざと拒絶している、なぜなら成長したくないから)人と付き合わなくてはいけないとしたら。

    • ひまわり
    • 2010年 2月 07日

    >「DVのパートナーが不条理な暴力でしつけるという方針を改めない段階で子供を連れて別れる」という選択
    …をし、実行に移すには準備が必要でした。
    一度家庭に入った女に、
    仕事はあるのだろうか?
    今更どんな仕事ができるのだろうか?
    家は借りれるのだろうか?
    微々たる収入で、生活していけるのだろうか?
    不安は無限大でした。
    そこが保障されないないと、
    ただでさえ、先延ばしをしてしまう私たちは、
    共依存から抜け出せません。
    お医者さんの仕事から逸脱している問題でしょうが、
    「こんな方法もあるんだよ!」と、導いて頂き、どこかに繋げて頂きたかった気持ちで一杯です。(私が出会った精神科の先生方への思い)

    • ぴよよ
    • 2010年 2月 12日

    ADHDジャイアンには、もしかすると本来、社会そのものが“邪魔”なのでしょうね。
    昔ながらの祖父母や兄弟姉妹のいる大家族とかが。
    自立するまでは、オシメを替える親だけいればよく、自立したら師だけいればよく、その次はボスだけいれば良くて仲間と優しさは要らない。利用するものでしかないから。成功する環境は野性的な一対一。
    私もそうされると、どうやら指示だけは若干速く受けられるようです。しかしジャイアンと違い決して人間らしい元気は出ないし怯えるし病んでいくし罰にしかならない。今までの人生でたまに誤解されてきました。私が混乱したら“ではぴよよには口を効かなければいい。”あえて忘れないで来ました。
    昔、当事者同士で特定の場所に集まっていても、その場にいるけど何で心の隙間を埋めたらいいのかさっぱり分からない戸惑いを漂わせている人、いた気がします。
    本心は(発達障碍の知識や収入や世渡りの上手さや同情集め等で。)背比べ自慢を一心不乱にやりたそうですが、どうも皆そうしているわけではない、私のような鈍いASを全力で罵倒するとインターネットの空き地からは蜘蛛の子を散らすように人がいなくなる、どうしましょう? のような。
    そしてそこまで思慮が回らず、合う人、合わない人を作って分け隔てばかりやろうとする人には、私が喰ってかかっていってしまったりして恥ずかしいこともしていたのですが・・・。

    • 182
    • 2015年 3月 06日

    「行き違い共依存」ってイネイブラーの方の立場からすると、「ええええぇぇぇ・・・っ!。」って感じで、にわかに受け入れるのが、清水の舞台から飛び降りるような感じです。
    自分の事であると、「本当に本当かな?」などと疑問もわきますが、案外他人の事だと理解が容易だったりします。
    という出来事が今日ありました。

    私の勤務先は要するに役人が天下りするためにだけにだけ存在するような団体で、とは言っても一応「それらしい仕事」はあって、それを処理する事務員ってのがいます。
    ちなみに、私の任務は天下りの椅子を増やすために、椅子を空けさせる為に15年以上椅子にしがみついてる民間人を追い出すために派遣されたスパイみたいなモノです。

    で、「椅子にしがみついている人」ってのがおよそ積極奇異型ASDっぽい人で、この人が居ないと「それなりの仕事」は全く回りません。責任感が強く「それなりの仕事」の下にぶら下がっている下請けにしてみれば、唯一「話の出来る人」として信頼が厚いです。
    なので当然その「椅子にしがみついている積極奇異型ASDっぽい民間人」は「私が居なければ下請けの皆さんが困る」という強い責任感でこの事務所を切り盛りしてきたわけです。
    (私は密かに彼女を「辣腕女将」と呼んでいて以前にもここにコメントした事があります。)

    立派と言えば立派。
    「この事務所を天下り役人と腰掛けてるだけのジャイアン局長の好きにさせてなるものか!」と奮闘し続けた事が、結果としてこの団体を生き延びさせ、市民の税金を無駄遣いさせ続けることに加担しているわけです。
    本当に他人の事だと「おもしろい」のは、この女将は役所が予算消化のための無駄な公共事業を振ってくると「公僕めが何様だ!人の税金を何だと思ってるんだ!」などと息巻いているのに、実態を見ると彼女自身がそれに加担しているという構図。イネイブラー。。。

    実は私は女将を今期中に追い出す事は達成できない見通しですが、別の椅子を一つ確保できて役所から信頼を得ている為に「役人の内緒話」を聞ける立場にあります。
    今日あった出来事とは役所の追い出しターゲットが女将であった事の言質がとれたのです。

    さて、役人は天下りの椅子が欲しくて女将を追い出したかった。
    私は女将の追い出しには失敗したが、天下りの椅子を一つ増やした。

    あれあれ、、、、、一番のイネイブラーは誰だ?

    最近、女将と仲良くなってきて、天下り用の椅子を一つゲットできたからもう追い出す必要はないかな?って思ってたけど、、、心を鬼にして追い出す方が社会の為なのかしら???

    あーもう!ワケが分からなくなったから終了!

    • amethyst
    • 2015年 3月 07日

    興味深い記事を取り上げてくださったので、便乗コメント失礼します。
    コメントに対するコメントにならないように気をつけます。

    「行き違い共依存」って見破るの難しそうです。

    結局、問題行動者(DVなど)の家族は、その問題行動者が最終的に
    精神的に自立する方向に行くのか、べったり依存のままの方向なのかで、
    自分たちの関係が「共依存」か「正しい関わり方」かを判断するしかないの
    かなと思ったりします。

    これはその場かぎりの行動や判断ではなく、俯瞰的な見方(上空から全体を
    見渡す見方)とか大局的な見方(ものごとの時間的な幅を考慮して見る見方)
    などが必要だから、適切なアドバイザーが欲しいところですね。

    もし私が当事者だったら、なかなか余裕がないだろうから、1人で判断するのは
    難しそうに感じます。

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