AC、人格障害関連

家族の都合②

 まだ二十代の女性で、思春期から混乱状態になり、以前は統合失調症の診断をつけられていたが、最近ジャイアン型ADHDのACに診断を変更したケース。

 私が以前に主治医を務めていたが、あまりに依存が強くなりすぎたので一時リセットを目的にA病院に転医して最近私がフォローすることを再開した。

 久しぶりに話を聞いてみると、A病院に転医してから、「イライラして家族に当たったり物を投げたりはしなくなった」という。それで母親始め家族は「落ち着いて良くなった」と今は言っていると言う。

 問題は私が担当していない間社会参加を目指した就労へのリハビリがほぼ停止していたことだ。

 以前は職業訓練校の委託研修などにも参加して、また就労へ向けた沖縄県の「通所リハビリ」も意欲的に参加していたのに。見る影も無く、表情も活気を失い、意欲が落ちている。

 本人も「以前の私と違う人になっている」と自覚している。

 薬剤は以前よりもむしろ軽くなった程度で、薬剤性の鎮静のかけ過ぎではないだろう。

 如何にも「慢性の統合失調症の患者になりました」然とした変化ではあるが、若い当事者のこの変わり様には驚いた。

 ジャイアンは誉められると木にでも上る。意欲を失い表面上落ち着いた状態になると家族は家族の都合で「良くなった」と誉める。また表面上の家族との交流はうまく行き、家族への依存はしやすい。

 「大人しく落ち着いた患者」で居れば家族とはうまく行き、逆に本人が就労などの社会参加への意欲を出すと前主治医も家族も「出来るわけ無い」と頭からつぶしてきたのだろう。

 この環境で、本人の意欲は残っているのだが、「自分でもよく分からないが違う人間になっている」という風な変化が起こった。マインドコントロールに近いことだろうか?

 私のフォローに戻ってから、ちょうどパソコンの委託研修があったので、「願書は出さなくてもハローワークで説明だけは聞くよう」と勧めたら、意外なことに本人はきっぱり「行きたい」と言う意志表示をした。

 本人にははっきりと社会参加への意志は残っており、ちゃんと話を聞けば、意欲は活性化することが可能だ。

 ただ勉強したり、委託訓練に通えばストレスがあり、家で不安定となって家族には不都合は多くなるだろう。遅かれ早かれ以前も相談していた実家からの自立も必要になってくるに違いない。

 何が本人のためにベストか? 少なくとも若いうちは社会参加の可能性を考えるべきであると私は思う。


関連記事

  1. ローレンツ「攻撃」より4.無名の群れ
  2. 親の責任③
  3. 主治医への依存
  4. 自己正当化型ADHD②
  5. ジャイアンか病気か
  6. ASの「関連付け」
  7. ゴールデンルールの例外
  8. ASと想像力⑨ ADHDははっきり言おう

コメント

    • YK
    • 2009年 12月 08日

    私は、欝のときの方が優しくて穏やかなので、
    自分を安全だと感じられ、その状態の自分が好きでした。
    絶好調の時は、いつも怒っていて、電柱蹴ったり、人の欠点が目に付いて、それを言わずに我慢するのが苦しくて、自分が恐かったです。(今も怖いです。)
    今は一人なので、元気で荒れ狂っても誰にも迷惑かけませんからいいのですが、
    もし親が生きていたら申し訳なくて元気でなどいられなかったと思います。
    コントロール不能のものすごいエネルギー持った怪物が身体の中にいるようです。
    でも今は元気いっぱいの自分が好きです!

    • あまがえる
    • 2009年 12月 09日

    家族の都合を持って当事者の症状が良いとか悪いとか判断するのは間違っていると思います。
    僕は若いうちでも社会にでる訓練を行うのが良くない場合もあると思います。例えば他人の存在が気になって仕方のないタイプ。
    外ではとても疲れ、一人暮らしで生計を立てていくだけの稼ぎをしても日に日に疲労困憊してゆき、暮らしがたちいかなくなるのが僕の場合です。

    • エイト
    • 2009年 12月 10日

    家族の都合①のように、優しく何でもやってくれる相手に丸投げして何もできなくなる状態
    ②のように、家族に自分を合わせた結果の”空っぽ”の状態
    私もよく理解できます。若いころその手前スレスレで生きていたような気がする。
    周囲にとって扱いやすくても、本人は辛いと思います。
    周囲の「手助け」 とか 「期待」 とか 「安心」 とか
    とにかくそういう余計なものがジャイアンを飼い殺しにして病気にするのだと思います。
    だから私もそういう余計なことを子供たちにしてはいけない。
    でもそれができないなら、いつか離れる勇気ももたなければ。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

PAGE TOP