AC、人格障害関連

発達障害と人格障害1.妄想性人格障害

 私はこれまで「人格障害」の診断についてあまり考えてこなかった。それはACとか発達障害の切り口から考えたほうが治療もやりやすく、「研究用の分類表」に当てはめる作業には興味が無かったからだ。

 しかし精神医療の現場ではいまだに成人発達障害は人格障害と診断されることが多く、その時点で嫌われて医療から追い出されることが実際多く見られる。

 その意味で、分類表の「対照表」を作ろうと考え、あらためてDSMⅣなどを読み直している。今回からDSMの10の人格障害を一つずつ発達障害の観点から検討する各論の作業を続け、最後に一覧表を作ってみようと思う。

 最初は「妄想性人格障害」からはじめよう。

<DSM‐Ⅳによる妄想性人格障害(Paranoid Personality Disorder)の診断基準>
 全般的な疑いの深さの傾向が成人期早期までに始まり、種々の状況から明らかになる。人々の行為や出来事を故意に自分をけなしたり脅かすものと不当に解釈する。それは以下の7つの基準のうち、少なくとも4項目以上があてはまる。

1. 十分な根拠がないにもかかわらず、他人が自分を利用したり危害を加えようとしていると思い込む。
2. 友人などの誠実さを不当に疑い、その不信感に心を奪われている。
3. 何か情報を漏らすと自分に不利に用いられると恐れ、他人(友人)に秘密を打ち明けようとしない。
4. 悪意のない言葉や出来事の中に、自分をけなしたり脅かすような意味があると思い込む。
5. 侮辱されたり傷つけられるようなことがあると、深く根に持ち恨みを抱き続ける。
6. 自分の評判や噂話に過敏で、勝手に人から不当に攻撃されていると感じ取り、怒ったり逆恨みしたりする。
7. 根拠もないのに、配偶者や恋人に対して浮気や不倫の疑いを抱く。

 ADHDとして想像すると、1、2は「基本的に自分にしか関心が無い」と読める。自分が他人を陥れたりだましたりして利用しうるから逆にそうされるのを恐れる。 

 5はジャイアンには共通の体験であり、4、6は思い込みの激しいジャイアンACの人に実際多い。

 社会的に非常に辛い目に遭った情緒障害型依存型ジャイアンは、1、2、3のような対人感覚を当たり前に持っている。(良く聞いてみると分かる)。

 7は私の想像ではジャイアンのファンタジーの一種で説明は可能だ。

 「元々ADHDで他人に興味が乏しく、虐待などの環境で顔色を伺い続ける情緒障害型依存型ジャイアンに成長して、社会的にも引きこもり等自信を獲得する機会に恵まれないで生きてきた成人」であればこうなり得るだろう。
 
 通常は医療の対象にならないが、母親や優しいパートナーが無理やりクリニックに連れて行き、幸運にも内面を医師やカウンセラーに話してくれればこのことが分かる。
 
 ASの人とも読める。ASの場合は、2の「疑う」理由が、「理解してほしいと強烈に思っている」という風に読むことになる。

 1、4、5、6、7は、世間の多数派から不安の強いASの人を見れば「そのまま」そう言われるだろうと私は思う。

 特にASのパートナー(愛着の対象)への思いは強すぎるので、携帯電話の履歴を調べ上げたり、普通に多数派から見ると「支配的」という行動になる。

 3については、「愛着の相手以外には自分の大事なことを知られてもいけない」というAS独特の対人関係の特徴を連想する。

 「元々ASだったが、愛着の相手との情緒的な交流に恵まれず成育し、裏切られる体験などから対人関係に極度に懐疑的となった成人」であればこんな風になるだろう。 

 ASの場合には、この疑い深さの根底には「理解されたい」とか「自分を受け止めてほしい」という強烈な人への志向がある。


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コメント

    • あまがえる
    • 2011年 1月 04日

    7がはじまると手に負えないです。
    ASに見られる行動なのですね。
    3は僕自身そうです。実際に情報をもらすと罠にはめられ、あらぬ噂を立てられ集団の中での居場所を負われます。それはどこでもあることです。例えば医療機関の中でも。医療を施す側でもありました。

    • ちひろ
    • 2011年 1月 04日

    私につきつけられたようで痛いです。ほんとうにとてつもなく痛い。
    私は「妄想」無しに生きられません。しらふで生きていけません。しらふだと、視線一つ、わずかなイントネーションの変化ひとつに(恐怖に近い)不安を感じます。
    特に買物がまともにできません。本屋、ゲーセン、マンガ喫茶のような暗かったり、ひきこもり系は大丈夫ですが、家電店はぎらぎらしていてめまいを感じ、ユニクロも圧迫感があって息苦しい、デパートも小空間ブロックに出たり入ったりで落ち着かない。なにより「人」がきつい。
    私のショッピングは、ボケっと他のことを考えながらふらふら歩くか、あるいは、欲しいものに集中し飛び込むか、どちらにしても45分以内に脱出し、そのあと休憩が必要なのです。
    時には、一日目、商品を見て回って家に帰り考え、2日目、購入する商品を最終決定し、でも家に帰り、3日目勇気を振り絞ってレジに行くなんてこともしてます。
    私が外に出るためにはどんな形であれ「妄想」が絶対必要です。今のこの鎧が重く歪みすぎているの分かってます。
    それでも私を守ってくれたのです。
    外の世界が安全になったからって「はい。さようならっ」てできないのです。
    この場所で追悼をさせてください。
    ちゃんとさよならできるように。

    • ミーコ(女)
    • 2011年 1月 04日

    成人発達障害者を人格障害として医療機関から追放されるのが残念になりません。
    YANBARU先生が住んでいる地元では成人発達障害者に医療機関、就労支援に強化していない。
    病院に行きますが精神科の先生から話しを聞いてくれなくて薬をいっぱい与えたり、薬漬けさせる。
    中には、デイケアの精神科先生から主治医で無いのに
    成人発達障害者の事を理解していないのに「キレたり、怒ったりなどしたら強制入院、刑務所みたいな所に入れる。薬を増やすぞ。もし、私が主治医ならテトラミド、ニトラデパムを出すと言われた」などの言い方をされた。
    テトラミド、ニトラデパム(睡眠薬)は発達障害者に合いますか?
    その先生は急にデイケアの精神科先生を突然、辞めた。何も言わなかった。その日までいると言いながら翌日になって来なくなってデイケアのみなさんなどを混乱した。その先生は、自分で心療内科を開業している。
    その時は、苦しんでいる、キレている、イライラしている時に心のカウセリングとして相談したのに先生から「君に相談が出来ない。怒っている時に話しをしたくないと言われた。帰れ」と言われた。
    成人発達障害者を人格障害、妄想性人格障害として決め付けるのはよくないです。
    YANBARU先生の地元、日本でも成人発達障害者に強化してほしい。

    • ちひろ
    • 2011年 1月 05日

    「妄想依存症」と自分にこの名を与えると、どう生きたらいいのか分かります。
    禁断症状に耐えながら、
    規則正しく生活し、無心で作務にはげめばいい。
    体質的にひとりでは無理なので、やっぱ神様に頼ろうかな。
    それから不可能な適応努力はしない。
    幼稚園のお迎えで疲弊し、帰宅後1、2時間は動けなかった本来の自分を忘れていました。友人宅お茶なんかしたときには夕飯がつくれない・・そんな自分。
    ボールがあっても、いえ、ボールがあったらなおさら仲間にはなれないのです。
    人生の真理はいつも単純です。先生ありがとうございました。

    • ちひろ
    • 2011年 1月 06日

    私は本当の自分を忘れていました。
    私は子供のころ、勉強がそこそこできることもあっていじめらることはありませんでしたが、休み時間はひとりで本ばかり読んでいまいた。それは女友達と遊べないことをごまかすためのカモフラージュでした。(男友達とは遊べます)
    結婚した後は、いかに井戸端に参加しないか作戦を練ってました。公園デビューなんてしませんでした。夫と車で買い物するのに耐えられなくなって、車を売り払いました。
    夫が支配的なこともあって、10年間近く日常の買い物や学校行行事、公園あそび以外でひとりで出歩いたことありませんでしたが、全く苦痛に思いませんでした。
    さすがにこのままではいけないと思い、PTAの役員になりました。そして久しぶりに会議のために夜の6時45分に家を出た時には「暗くて怖い」と思ったしまつです。
    そして子供を少年団サッカーに入れ、そこでフットサルにであったのです。
    私にとってフットサルは人の海原にでるためのうきわでした。ところが海はすぐに嵐にになり、もどる岸辺もみあたらない。そこで「被害妄想」救命ボートに逃げ込んだのです。
    その時、無意識で気付いたのです。
    「いじめられっ子」という立ち位置が「対人不安」を消してくれると。
    「この感情を持ちづ付けるくらいなら死んだ方がまし」と感じる、底知れない不安感情のある場所にたどり着かないようポイントを置く。迂回させていたどり着いたのが「被害妄想」とその現実化。
    ・・これが・・私?
    でも本当に一番驚いているのは、「私」を「私」がすっかり忘れていたことです。
    おかえりで・・いいのかな。

    • うにゃ
    • 2011年 1月 06日

    「対照表」が、父を「理解」するヒントになるのではないかと、期待を抱いてます。
    父は、私を自分の子供として扱わずに言葉や行動で徹底的に否定してきました。
    そのことを主治医に話したところ、父には何らかの性格的な障害がある、と言われました。
    でも、私は父親がどんな人間なのか分かりません。
    一言で言うと、「どこの馬の骨かもわからない」。
    なぜなら、まともなコミュニケーションができなかった。
    まして、父の生い立ちや、成人してからの経歴などを聞くのは「後妻の子」である私にとって、暗黙のタブーだ。
    でも、分からないのがすごく気持ち悪い。
    自分は父からどんな影響を受けたのか知りたい(遺伝的素因を含めて)。
    受けた虐待について「こういうことだった」と冷静に整理したい。
    YANBARU先生の意図とは違うかもしれませんが、上記の意味で、状態で分類されるDSM(理解合ってます?)と発達障害の「対照表」がとても興味深いです。
    私には4と5が当てはまります。特に子供の頃に顕著でした。
    6については、自分の知らないところでされる「陰口」は、
    存在しないのと同じなので、当てはまらない、ということになります。
    これは、私が「個体識別」ができない現われかもしれません。

    • ちひろ
    • 2011年 1月 20日

    ふいに思い立って、ネットで統合失調症チェックをしました。結果は「病院行け!」です。そうだったのかと納得したら心が軽くなりました(おいっ!)
    ・・・
    最強ストレスフットサル練習後の帰りです。
    「青信号だよ」
    そう見えたような、言われたような気がして横断歩道をチャリで渡ると、車が50センチぐらいすぐ横で止まりました。「あれ?」と思い、止まって信号を確認したら、「赤」でした。状況が把握できなくて、5秒か10秒かわかりませんが、普通じゃあり得ないタイムラグの後、「赤信号」に驚いてようやくあわてて渡ったのです。そして後でよくよく考えると、十字路で一度横断歩道を渡った直後に、止まらず右折していたのです。
    車の運転手から見たら、自殺企図にしかみえません。(すみませんっ!!)
    この時、車は音もなくゆっくり止まったような気がしてました。
    それからしばらく経って、暑くなったころ、体育館のドアを開けて練習中に、突然、頭に音が響きました。外からの音ではなく、地獄からの呼び声が響いたような気がして、しばらく立ち尽くしていると、もう一度音が聞こえてきました。
    「幻聴じゃなかったんだ。びっくりした。頭おかしくなったのかと思った」と、振り返り、開いているドアの方を見ると、外は暗闇でした。それは「地獄の入口」のようで、すいこまれていくような気がしました。
    この音は近くに、車の何かしらの施設があり、急ブレーキのテストやっていたようです。
    私はこの音が気になって、呼ばれているような気がして、音がするたびにドアの先の闇をしばらく見つめていました。
    そうこうしているうち、準備の時にコーチから扉を開けないようにと指示がでました。それでも開けようとして「そこは開かない!」と注意を受けました。
    ・・・
    と、こんな調子でどう考えても普通じゃなかった気がします。
    あまりにもストレスがかかっていたので、魂を飛ばして行動していたら、かるく統合失調状態になってしまったようです。今頃気付いても遅いかもしれませんが、攻撃を受けた理由のひとつが分かってむしろ心が軽くなりました。
    今は、仕事場でもサークル活動でも問題なくやれているので、大丈夫です。(家事がやばいですが・・)

    • nishigoman
    • 2011年 11月 03日

    妄想性人格障害は配偶者の行動と接し方を変える事によって治癒の可能性があるとやんばる先生は書かれていましたが、本人の妄想が強度に固定化している場合は、全く相手にされないことが判りました。どんなに行動や接し方を変えても根本的に配偶者を疑っている姿勢はかわれませんでした。
    認知の歪みが矯正されなければだめなのではないでしょうか。そうとしか思えません。

    • ヨーコ
    • 2012年 4月 09日

    この記事を読むと離婚が成立したばかりの元夫はまさに妄想性人格障害と思われます。私自身の経験だと私の主観が入りますが、私に対する態度だけでなく職場でもそうなので、仕事が長続きしませんでした。離婚騒動が始まってからは、かなりひどくなり、家中を盗聴器が隠されていないか探したり、私が億単位のお金を隠していると信じていたり、私が弁護士と浮気していると信じていたり、もうへとへとになりました。どうみても正常じゃなかったので、病院に連れて行きたくても、本人は自分はまとも、他の人が自分を陥れようとしている(医者も含め)ので、病院には行かない。自分を守るには離婚しか方法はありませんでした。離婚した今でも彼のことは心配です。どうやったら彼に治療を受けさせられるのでしょうか?それともこれは「病気」ではないので治療なんてないのでしょうか?そういう私は典型的な共依存だと自覚しています。

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